宇治市のA中学校では、校内委員会が開かれています。今回は担任の気付きから出されたケースについての協議です。
校内の特別支援教育コーディネーターは、保護者との相談を経て、具体的な支援の手だてを探るために市の相談支援チームへ巡回相談を依頼しました。 後日、巡回相談員(市のコーディネーター)が学校を訪問します。
実際に参観等を行ったり、校内委員会からアセスメントの説明を受け、理解と支援のための相談を行います。学校は、相談の中で出された支援のためのヒントを整理し、その子どもに合わせた手だてを検討します。
さらに必要なケースについては、府の専門家チームにも相談を依頼し、いろいろな分野の専門家に助言を受け、子どもの理解と支援に生かします。
これは、宇治市内の小・中学校が本年度から設置した「特別支援教育校内委員会」の活動の様子です。
LD、ADHD、高機能自閉症を含め特別な教育的支援を必要としている子どもの実態把握を行い、一人一人の教育的ニーズに応じた具体的な支援をチームで検討している様子がわかります。
宇治市では、子どもを支援するシステムが各学校において構築され始めたことを受けて、その学校を支援するシステムとして市独自の相談支援チームを立ち上げました。(図1参照)
関係機関とネットワークを創りながら、各小・中学校への巡回相談などを実施しています。
〔学校の要請を受けて毎月行われる巡回相談〕
毎月3〜4回の巡回相談日を設定し、校内委員会活動の様々な要請に応えています。
その内容には、次のようなものがあります。
@児童生徒の捉え方と支援の内容についての相談(今年度は約100ケース)
A校内委員会での実態把握について
B校内の特別支援教育コーディネーターへの支援
C専門的な立場からの保護者との相談
DLD、ADHD、高機能自閉症を含め特別な教育的支援を必要としている子どもの理解と支援のための研修会への協力
〔相談の例〕
「教室からの飛び出し」をどのように考え、対応したらいいのかについて巡回相談を行いました。
この子どもには、知的な発達の遅れはありません。しかし、ことばを受け止める力が弱く、社会的な約束やルールが分かりにくいので、学校生活の中でも「どうすればいいのか」が分からず、自分勝手に見える行動をしてしまっているととらえました。
そこで、「今、何をするのか」を分かりやすく、端的に伝えるとともに、「学校では先生の言うことを聞いて行動すればうまくいく」という経験を積めるよう支援することが大切であるとのアドバイスを行いました。
アドバイスを受けて、学校では「教室から出てはいけない」ではなく、「今、どうすればいいのかを伝える」という視点で全校職員が共通理解して対応しました。その結果、教室からの飛び出しは減少し、2か月後には、教室の中で落ち着いて学習できるようになりました。
手だての有効性を検証することができたケースです。
目 次 | はじめに | 構成と使い方 |
第1部 | |||
1.聞くことが苦手 | 2.うまく話せない | 3.読むことが苦手 | 4.うまく書けない |
5.計算が苦手 | 6.文章題が苦手 | 7.まわりが気になって | 8.わかってるんだけど |
9.衝動的に動いてしまう | 10.人との関係が | 11.コミュニケーションが | 12.なにか気になって |
・不器用な子ども | ・行動上の問題 |
第2部 | |||
・学校体制 | ・学校を支援するシステム | ・宇治市における取組 |
第3部 | |||
・精神科医から | ・小児科医から | ・作業療法士から | ・臨床心理士から |
・保護者から | ・保護者の手記 | ・Q&A |