はじめに
平成15年3月、文部科学省の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議より「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」が出され、「障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う『特殊教育』から障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う『特別支援教育』への転換を図る」ことが提起されました。
また、平成14年12月に閣議決定された「障害者基本計画」に基づき決定された「重点施策実施5か年計画」において、「小・中学校における学習障害(LD),注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童生徒への教育的支援を行う体制を整備するためのガイドラインを平成16年度までに策定する」ことが示されました。これを受けて文部科学省が作成した「小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育的支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」が、平成16年1月、全国の都道府県教育委員会に通知されたところです。
京都府では、文部科学省「学習障害(LD)に対する指導体制の充実事業」(平成13,14年度)に続いて、「特別支援教育推進体制モデル事業」(平成15,16年度)の指定を受け、宇治市を総合推進地域、乙訓・山城の5市3町を推進地域に指定し、小・中学校の通常の学級に在籍するL、ADHD、高機能自閉症等の児童生徒への支援の取組を進めてきました。
総合推進地域では、特別な教育的支援を必要とする児童生徒の支援方策を検討し、全体的な支援体制を整備するため、「校内委員会」をすべての小・中学校に設置しました。そして、チームの要となる「特別支援教育コーディネーター」を位置付け、こうした児童生徒への支援を進めています。また、推進地域の小・中学校でも、現在こうした取組が進んできています。
この事業では、担任が指導の困難さを感じたり、保護者が相談を希望する児童生徒に対して、その配慮や支援方法を具体的に検討して実践し、その評価を通してその児童生徒に応じた支援につなげていくことを特に大切にしています。各指定地域では、学校からの依頼を受け、教育・医療・福祉等各分野の専門家で構成する巡回相談のチームや専門家チームが、様々な情報をもとにケースのアセスメントを行い、支援方法の提示と継続的なサポートを行っています。また、府の巡回相談のチームとともに学校を支援する指定地域の巡回相談員(その市町のコーディネーター)を位置付けて小・中学校への支援を行っています。
府内のすべての学校において、担任をはじめ児童生徒に関わる大人が「その子の学びにくさ」に気付き、その原因と今までの指導内容を見直し、「今、ここでできる」配慮や支援を始めること、そしてそれを学校として組織的に取り組むことが期待されています。
本冊子が特別な教育的支援を必要とする児童生徒への配慮や支援のヒントになり、学校での支援体制を作っていく上での参考になることを願っています。
特別支援教育推進体制モデル事業調査研究運営会議
委員長 友 久 久 雄
目 次 | はじめに | 構成と使い方 |
第1部 | |||
1.聞くことが苦手 | 2.うまく話せない | 3.読むことが苦手 | 4.うまく書けない |
5.計算が苦手 | 6.文章題が苦手 | 7.まわりが気になって | 8.わかってるんだけど |
9.衝動的に動いてしまう | 10.人との関係が | 11.コミュニケーションが | 12.なにか気になって |
・不器用な子ども | ・行動上の問題 |
第2部 | |||
・学校体制 | ・学校を支援するシステム | ・宇治市における取組 |
第3部 | |||
・精神科医から | ・小児科医から | ・作業療法士から | ・臨床心理士から |
・保護者から | ・保護者の手記 | ・Q&A |