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平成15年度
平成16年度

         

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実 践 例 目 次   ※ 各項目にリンクします 
T 児童の学力状況をどのように
して把握するのか
U 習熟の程度に応じた少人数
指導のあり方について
V 算数的活動の工夫 W 指導と一体化した
   評価の工夫
(1)
度数分布グラフ(小学校基礎学力診断テスト)等から少人数指導の方針を立てる例 (1)
課題によるグループ分けとコース設定の例 (1)
6年/分数のかけ算、わり算の学習で、「面積図」を使った算数的活動例
(2)
「こべつ〜る」とレディネステストから学力の状況を把握する例 (2) 学習コースを自ら選ぶ力の育成をめざす例 (2) 4年/面積の学習で、「1uが体感できる教具」を使った算数的活動例
(3)
児童の課題にあった指導方法の工夫の例 (3)
新たな課題と習熟の程度に応じた少人数指導への期待 (3) 4年/三角形の学習で、「二等辺三角形の作図法を考えるソフト」を使った算数的活動
(4) 4年/三角形の学習で、「ジオボードソフト」を使った算数的活動


V 算数的活動の工夫

  前項で述べたように、各校でのこれまでの授業改善の努力によって、正答率が全般的に伸びてきている。にもかかわらず、特定の誤答に関して言えば、依然として同様の比率でまたは、増加の傾向で低位の児童が存在する。今後は、これらの児童に焦点を当てた指導を進めることが大変重要であると考える。
  そのためには、まず課題を明確にすることは当然である。その上で、指導方法の工夫改善を進めるわけであるが、その視点としては、定着・習熟以前の作業的・体験的な活動を取り入れた算数的活動を工夫していくことがとりわけ大切である。
  算数的活動は、数量や図形についての感覚を豊かにするとともに、基礎的な知識と技能を身に付けるためには欠くことのできない活動である。また、この算数的活動の成否にとって優れた教材教具の存在が重要な要素となる。
  そこで、優れた教材教具を活用した算数的活動の実践例を紹介する。


(1) 6年/分数のかけ算、わり算の学習で、「面積図」を使った算数的活動例

※ ノートの記述例へ

※ ノートの記述例へ

動画が見られます。
  児童にとって、分数÷分数の理解は大変困難な内容である。これは割ることの意味が具体的にイメージしにくいことも一因であると考えられる。教科書では、線分図や面積図を使った考え方が載っており、教師の指導・解説には活用されてはいるが、児童自身が考える時の手がかりとして活用しているかどうかは疑問である。
  そこで、この面積図を、児童自身が分数の乗法・除法の式の意味を考える手がかりとして使い、より深く理解できるようにするというのがこの実践例のねらいである。
  そのためには、下図のような面積図のプリントを用意し、分数のかけ算の学習の当初から活用することにした。
  児童は、つねにこのプリントの面積図を使いながら、式の意味を考える学習を続けることで、一般に理解が難しいとされる分数のわり算についても、その考え方を面積図を使って説明できるようになった。

                      ※ ノートの記述例へ
<指導上の工夫>
@ ノートに貼れるサイズの面積図のプリント(カード)をたくさん用意し、いつでも使えるようにしておく。
A 面積図を使って式の意味を考える時間をしっかり確保する。
B 単元を通して、一貫して面積図を使って考えることに慣れさせる。
C 児童自身が考え方を書いた面積図は、その都度ノートに貼り、考え方を文章でで書くように指導する。
D 発表ボードを使って、それぞれの児童の考え方を友達の前で発表する機会を随時設ける。

動画が見られます。
  「数学的な考え方」を育成するためには、考える際の足がかりとなる材料と十分な時間を与えることが必要である。しかも、その材料に慣れると同時に、考えること自体にも慣れさせることも必要である。こうした条件を念頭におき、「数学的な考え方」を育成する新たな算数的活動を創造していくことが求められている。


(2) 4年/面積の学習で、「1uが体感できる教具」を使った算数的活動例
 1uの指導をするとき、いろいろと工夫を凝らし教材を開発された先生は多いと思う。
 ここで紹介する教具は、材料としてゴミ袋を使ったというだけでなく、細部に渡って考案者のアイデアがたくさん付加されている点でも優れている。教具の特性等の紹介は省略(詳細はセンターHPに)することとして、活動例をいくつか紹介する。
NO 活動内容 活動のねらい
@ 1uをつくる活動 辺の長さを測ったり切ったり、直角を意識したりする活動を通して、1uの広さを体感する。
A 1uの広さに何人のれるか確かめる活動 床の上に1uの教具を広げ、その上にできるだけたくさんの友達がのる活動を通して、1uの広さを体感する
B 教室や体育館に1uの教具を敷き詰めて広さを確かめる活動 まず、教室(または体育館)の広さは何uかを予想(根拠も述べさせるのが大事)し、実際に1uの教具を敷き詰めて広さを確認するとともに、単位量をとしての1uを体感する。
C 1立方メートル(体積)のかさを確かめる活動 この教具の上下辺に1mものさしを入れたもの6枚を組合わせて、協力しながら1立方メートル(体積)のかさを作り、中に入ったりする活動を通して1立方メートル(体積)のかさを体感する。
 ※ 画面をクリックすると拡大
上のスライドは、ITEC/学校支援/小学校/「算数の教材教具集」で見ることができます。
  「数学的な考え方」を育成するためには、考える際の足がかりとなる材料と十分な時間を与えることが必要である。しかも、その材料に慣れると同時に、考えること自体にも慣れさせることも必要である。こうした条件を念頭におき、「数学的な考え方」を育成する新たな算数的活動を創造していくことが求められている。




(3) 4年/三角形の学習で、「二等辺三角形の作図法を考えるソフト」を使った算数的活動例
  図形の作図法は、児童自らが考えるというよりは、知識や技能として教え、習熟のために練習を繰り返すという場合が多い。しかし、作図の方法は道理にかなっており、その方法を考えることは図形についての理解を深める上で有効であると考える。
 とはいっても、何も足がかりなしに児童に考えさせるには無理がある。そこで、その足がかりになる「動きのある教材」をもとに、児童自身が考える場を設定しようというのが、ここでの算数的活動例である。
 この動画ソフトは、下の図にあるように「等しい2辺が交わる点を見つけることがポイントであることに気付く」そして、「その点を、決定する作図の方法を考える」ことがねらいである。

画面の前で、動作化しながら
二等辺三角形の作図法を説明する児童

動画が見られます。
  このソフトを使った指導の中で、画面を見ながら、動作化をするなどして真剣に考える児童の姿が見られた。
  このようにして身につけた知識や技能は、確実な定着につながると考えられる。教師自身が「これは教え込む内容」と考えている内容についても今一度見直し、適切な教材と時間設定によって有効な算数的活動となりえないかを点検することが大切ではないだろうか。

(4) 4年/三角形の学習で、「ジオボードソフト」を使った算数的活動例
 ここでは、ジオボードソフトを使って、図形についての豊かな感覚を育てる実践例を紹介する。 ジオボードについては、かなり一般的になってきたが、まだ聞いたことがないという先生方のために、まずは、ジオボードとは何かということを紹介する。
「ジオボードは,アメリカで広く使われている学習具で、図形領域の学習を中心にもちいられます。実物は、正方形の板にペグと呼ばれる釘が打ち付けてあり、そこに輪ゴムをかけて形を作ります。ここにあるジオボードは、アメリカのNCTMのサイトにあるもので、マウスを使って実物のジオボードと同様な活動ができるようになっています。」
(www.e-sensei.ne.jp/~Innternet Math/nctm/goeboard.htmlより引用)
(※引用文中「NCTM」とはNational Coun-cil of Teachers of Mathematicsで、日本語では全米数学教師協議会と呼ばれているアメリカ最大の数学を教える先生方の研究組織) 


動画が見られます。
 図形の構成や図形の性質について学習するためには、その土台として具体物の操作体験が重要である。その体験を通して身についた感覚をもとにして、図形についての理解が深まっていくと考えられる。(2)-ウ「新たな課題と習熟度に応じた少人数指導への期待」で示したような誤答をする児童の多くは、このような感覚が十分に育っていないと考えられないだろうか。
 そこで、これらの児童には、図形に関する新たな学習を進めることと並行して、 短時間に効率的な体験ができる工夫が必要だと考える。それには、ITを活用した学習が有効であり、今後各校でハード面の整備が進むと益々活用の幅が広がることが期待できる。
 ジオボードソフトを活用した実践で、次のような事例が見られた。
 二等辺三角形の作図の学習の結果、児童は、定規とコンパスを使って二等辺三角 形が正しくかけるようになった。そこで、ジオボードソフトを使って二等辺三角形をたくさんかく活動をさせたところ、明らかに二等辺三角形の特徴を感覚としてとらえられていないと考えられる児童が何人か見つかったのである。
 このことから言えることは、操作の仕方や図形の特徴などを技能や知識として覚 えることはできても、それが図形についての感覚を育てることとは直接は結び付いていないということである。
 また一方で、ジオボードソフトを使って、二等辺三角形の作図法を見つけ出した 児童もいる。下の2例は、ジオボードならではの作図法であり、二等辺三角形に対する理解がより深まったと考えられる。
                     ※ 実際にジオボードを使った児童の事例へ




W 指導と一体化した評価の工夫

指導と一体化した評価の工夫
 評価と指導のスパンをいかに短くするか?  評価というとすぐにテストをすることが思い浮かぶが、ここでは、授業時間内にいかに児童の変容ぶりを見て取り、指導するのかという意味での評価について整理したいと思う。特に算数においては1時間1時間の積み重ねが重要であり、評価と指導のスパンをいかに短くするかがポイントとなる。その時間内にその時間の目標をクリアさすには、その時間内に評価することが必要となる。ややくどくなったが、こうした視点から評価を考えてみたい。
 学習過程のどんな場面を観察するのか?  ここでは、児童が算数的活動をしている時、つまり、個々の児童が主体的に学習活動をしている場面に限定したい。個々の児童の主体的な学習活動の状況を観察するためには、まずはそういう算数的活動の時間を設定しなくてはならない。そして、児童が活動に没頭できるすぐれた教材教具も必要である。
 何を観察するのか?  その算数的活動によって、個々の児童が「ねらいとしていた児童の姿」に変容したかどうかを観察するのである。その「ねらいとしていた児童の姿」が評価規準なのである。その評価規準に照らしたとき、「十分に満足できると判断される状況」にあるのか、あるいは「努力を要する状況」なのかを観察するのである。
 しかし、ここで終わっていたのでは指導につながらない。大切なのは、個々の児童にとって次の課題は何か、あるいは、つまずいている箇所はどこなのかを見つけ出すことである。それこそが観察の目的である。
 観察の結果、どんな指導をするのか?
(ア) 「おおむね満足できる状況」と判断できる児童に対して
 児童によっては、そのまま活動を続けさせるのが適当な場合もある。こうした児童には、それで良いことを告げるなり励ますなりしてそのまま観察を続けることが大切だろう。
 また、より理解を深化させるために「発展的な学習」に進むよう指導することも必要である。(※「発展的な学習」については、(ウ)で述べている)
(イ) 「努力を要する状況」と判断される児童に対して
 これらの児童にもさまざまなケースが考えられる。誤りには気づいていいるが、 その理由が分からず困っている児童もいれば、自分が誤っていることにすら気づいていない児童もいる。理想的なのは、本人が助けを求めるまではじっと見守ることである。また、自ら助けを求めた時にも、「はじめにこう考え、次にこう考えたがどうしても分からない。考え方のヒントがほしい。」と訴えるような児童に育てることである。こうなってこそ、「生きる力」につながる「主体的に学習する力」が育っていると言えるだろう。
  しかし、現実には、限られた時間内での学習活動であることから、ただ見守るわけにはいかない。そこで、有効な支援が必要となる。次に挙げるのは、支援の観点の例である。ただ単にヒントカードや補充のための教材プリントを用意することだけが「補充的な学習」ではなく、次のような声かけもまた、「補充的な学習」となりうると考えたい。
@ 考える視点を明確化するような声かけ
ex.「角度に注目して考えてごらん。」「何を問うているのかな。」等
A 考える視点や方向性を転換を促すような声かけ
ex.「今度は、かかった時間から考えてみるとどうなるかな。」等
B あるところまでもどってもう一度やってみるように促す声かけ
ex.「ここまでは良いよ。」「どうもこの辺が怪しいね。」等
(ウ) 「十分満足できる状況」と判断される児童に対して
  習熟の程度によってグループを編成しても、その中でも興味・関心が違ったり、学習の速度や進め方、理解の仕方が違ってくる。それが個性であり、それらを認め大切にしながら進めるのが個に応じた指導である。
  算数的活動を設定しても、さっさと済ませて暇そうにしている児童を見かけることが多い。目指すべきは、早く終わったら次に何をすべきかをあらかじめていねいにしておくこと。さらには、それを習慣化するまで指導し、指示がなくても児童自ら他の考え方や学習方法で次に進める力を育てておくことである。後者の方がより高度な指導であることは言うまでもない。「終わったら何をすればいいですか。」などという質問は、これまでの指導の不十分さを表していると言えなくもないだろう。
 「発展的な学習」というと発展問題を用意しなくてはと考えがちだが、これも(イ)と同様、ちょっとした支援が十分「発展的な学習」となり得る。
@ 何度も繰り返しやって習熟を図るような声かけ
ex.「何度やっても間違いはないかな。」「もっと速く、ていねいにできるようになるかな。」
A 別の場面を考えるよう促すような声かけ
ex.「○○のような時はどうだろう。」「似たような問題を作ってごらん。」
B 考え方を言語化して表すよう促すような声かけ
ex.「言葉の式にできるかな。」「考えを文にしてごらん。」


実 践 例 目 次   ※ 各項目にリンクします 
T 児童の学力状況をどのように
して把握するのか
U 習熟の程度に応じた少人数
指導のあり方について
V 算数的活動の工夫 W 指導と一体化した
   評価の工夫
(1)
度数分布グラフ(小学校基礎学力診断テスト)等から少人数指導の方針を立てる例 (1)
題によるグループ分けとコース設定の例 (1)
6年/分数のかけ算、わり算の学習で、「面積図」を使った算数的活動例
(2)
「こべつ〜る」とレディネステストから学力の状況を把握する例 (2) 学習コースを自ら選ぶ力の育成をめざす例 (2) 4年/面積の学習で、「1uが体感できる教具」を使った算数的活動例
(3)
児童の課題にあった指導方法の工夫の例 (3)
新たな課題と習熟の程度に応じた少人数指導への期待 (3) 4年/三角形の学習で、「二等辺三角形の作図法を考えるソフト」を使った算数的活動
(4) 4年/三角形の学習で、「ジオボードソフト」を使った算数的活動


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