1 音楽科での授業改善のポイント |
子ども達が音楽に積極的に関わり、「表現」領域と「鑑賞」領域との関連性をもたせる中で楽しい 音楽活動を展開することが大切である。
「楽しい音楽活動」とは、「音楽が好きである」「音楽ができる」というベースの上に立って成り立つものであると考えられる。 音楽の基本がわかり、「音楽が好きである」音楽活動を行うためには、「音楽的な感受(リズム、旋律、和声、強弱、速度、音色などをとらえ、変化や違いを感じ取る)を深め、音楽表現への思いを膨らませることができる」授業の工夫(授業改善)が必要である。
本題材は、その中で特にリズムと音色の変化や違いを感じ取り、音楽の楽しさを味わわせたいと考えた。 |
2 具体的な授業改善の工夫 |
(1) 学習形態の工夫 |
音楽科のみならず児童一人一人の学びに対する願いを実現するには、主体的な体験活動が大切になってくる。音楽科の場合、一人で聴いたり、演奏したりする→二人で聴き合ったり、演奏し合ったりする→グループでより幅のある音やリズムの重なりのおもしろさを体験するなど、学習形態をそれぞれのねらいに応じて組み合わせることが大切である。この題材では、一斉学習や個別学習、ペア学習、グループ学習等を以下のような場面に試みた。
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ア | 一斉学習 | |
@ | 第1時の導入段階でこれから行う授業の流れを理解し、「やりたい!」「おもしろそう!」というような意欲付けに結び付けるようにした。 | |
A | 鑑賞曲を聴き、体を使って出る音のおもしろさに気付き、これから行うアンサンブルの音づくりについて理解を深めるようにした。 | |
B | 各グループのリズムアンサンブル発表を行い、友達の表現の違いに気付いたりおもしろさを感 じ取ったりするようにした。 | |
イ | 個別学習 | |
鑑賞曲を聴いた後、自分の体を使って出せる音づくりに挑戦し、手や足などを使って自分でつくり出した音のおもしろさを感じ取るようにした。 | ||
ウ | ペア学習 | |
「十五夜さんのもちつき」では二人組を決め、ペア学習を行った。この教材では「つき手」「返し手」を決めて速さをだんだん速くしたり、手の打ち方を工夫したり、遊び方の工夫を行い挑戦意欲を高めていき、グループでのオリジナルリズムアンサンブルへとつなげていくようにした。 | ||
エ | グループ学習 | |
@ | 教科書に出ているリズムアンサンブルをグループごとに楽しめるようにした。 | |
A | 各自でつくったリズムパターンを組み合せ、各グループごとにリズムを重ねたり出す音色を工夫したり、また話し合いにより、さらにグループの中での重なりや音の違いのおもしろさなどの工夫を行い、主体的なグループ活動になるようにした。 |
(2) 題材指導評価計画の作成 |
一つの題材を指導する場合、題材の目標の設定と同時に指導計画を立てるが、評価計画も一 緒に考えることが大切である。指導者が指導計画を立てる段階で、この題材の指導全体を通して何をどのように評価するのかということを頭におき、子どもの実態や学習内容に即して評価の進 め方を工夫していくことが大切である。具体的には学習のねらいに沿って評価の観点ごとに評価規準を設定し、目標としている内容の実現状況を子ども一人一人において的確に捉え、その成果を継続的、総合的に把握することが大切となる。
ア 題材「体で音楽」と学習指導要領との整合性を考える。指導要領のA表現領域では(4)「音楽 をつくって表現できるようにする」のア、イの内容であり、B鑑賞領域では(1)「音楽を聴いてそ のよさや楽しさを感じ取るようにする」のウの内容である。 イ 「A 表現・創作」の評価規準の作成 |
「B 鑑賞」の評価規準の作成 |
ウ 題材の目標と評価規準の作成
「体で音楽」の題材の目標と評価規準を作成した。この部分は児童の実態を考慮し、 国立教育
政策研究所の資料「A表現・創作」と「B鑑賞」の評価規準の具体例を参考にした。 @ 題材の目標 ・友達と協力して音楽づくりを楽しんだり、簡単なリズムを作って実現することに興味・関心をもつ。
(音楽への関心・意欲・態度) ・音楽を聴いたり音楽遊びを通して、リズムや音の組合せのおもしろさを感じ取る。
(音楽的な感受や表現の工夫) ・様々なリズムや旋律、音の組合せを生かした表現の仕方を工夫している。
(音楽的な感受や表現の工夫) ・音の組合せを工夫したり、簡単なリズムを作り個人やグループで表現することができる。 (表現の技能) ・鑑賞曲や他のグループの特徴ある音を感じ取って聴く。
(鑑賞の能力) A 評価規準 |
エ 題材指導計画、評価計画(全8時間)の作成
学習活動における具体の評価規準は指導内容と整合性をもたせ、何を(評価項目)、どのよう
にして(評価方法)、いつ(評価場面)評価するのかを明確にした。 評価規準の他に、努力を要する状況への具体的な手だて、十分満足できる状況も明 らかにし
ておくことで指導がスムーズに行えると考えた。 |
(3) 1単位時間分の特徴的な指導の工夫 |
ここでは、8時間配当の最後の時間の各グループ発表を例に取り上げた。
本時の目標は「各グループごとに創作リズムアンサンブルを発表し、友達がつくり上げた音楽表現の良さ
を感じ取る。」とし、表現の技能と鑑賞の能力について評価を行うこととした。 本時の展開 |
(4) 授業に役立つ指導計画・評価表の作成 |
実際に授業を行う場合、1時間1時間の指導内容、学習活動、具体の評価規準等1枚にまとめてあ れば指導者も授業がイメージしやすく、評価の記録もしやすいと考え、資料2のような表を作成した。特 に手だてを必要とする児童については丁寧に記録しておいた。 例えば「十五夜さんのもちつき」の教材では、なかなかリズムが取れなかった児童が、グループアンサン
ブルではしっかりと演奏できていたというようなことがあり、ずっと記録をとっておくと、変容(伸び)の見られ る児童が何人か明らかになった。 このように指導と評価の一体化を意識した実際の授業に役立つ一覧表の作成は授業改善に有効
であっ た。 |