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平成15年度
平成16年度

事例1
事例2

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 事例1

I  第3学年及び第4学年の指導内容について  

1 中学年の特徴

 小学校中学年になると、児童の思考力も飛躍的に伸びる。
 第1学年及び第2学年では、文章を時間の順序などに即してとらえてきたが、第3学年及び第4学年では、読む内容が高度になり、より正確に文章を読み取ることが期待されてくる。
                             (小学校学習指導要領解説国語編より)  

※書かれている内容を読み取るだけでなく、言葉のはたらきにも目を向けながら、内容を読解していく力をこの時期からつけていくことが大切であると考える。


2 [第3学年及び第4学年]「C 読むこと]と「言語事項」との関連を考えた指導内容  

<単元と学習指導要領との関連内容>
「C読むこと」

<目標>目的に応じ、内容の中心をとらえたり段落相互の関係を考えたりしながら読むことができるようにする。

 イ 目的に応じて、中心となる語や文をとらえて段落相互の関係を考え、文章を正しく読むこと。

 オ 目的に応じて内容を大きくまとめたり、必要なところは細かい点に注意したりしながら文章を読むこと。
「言語事項」

(1) オ 文及び文章の構成に関する事項

  (ア) 修飾と被修飾との関係など、文の構成について初歩的な理解をもつこと。

  (イ) 文章全体における段落の役割を理解すること。

  (ウ) 文と文との意味のつながりを考えながら、指示語や接続語を使うこと。

この単元でつけたい力
・形式段落の要点を抜き出す力、意味段落に小見出しを付け、内容を整理する力

・文章の中心をとらえる力



U  小学校基礎学力診断テストの結果の概要

 1   平成16年度4年生国語の府平均正答率  


 2  過去の小学校の基礎学力診断テスト結果から(平成10年から16年までの問題から抜粋)
 平成16年度の4年生国語の平均正答率は74.9%で過去5年間の中で一番高い正答率である。しかし、出題問題の中で、特に課題の見られる問題は、上のグラフからも分かるように、14 15の問題である。 14 の問題は、文章全体を大きく2つに分ける問題、15の問題は、修飾・被修飾の関係を問う問題である。

 文や文章の構成にかかわる問題は、平成16年度だけでなく、過去の結果を見ても例年低い正答率で、課題となっている事項である。 文章の内容の中心を正確にとらえて読むためには、段落相互の関係をとらえ、文章全体 がどのように組み立てられているかを理解することが大切になってくる。

 学習指導要領の 言語事項オ(ア)(イ)(ウ)「C読むこと」の(1)イの指導と併せて文章全体という視点をもっ て指導にあたることが大切である。


文章構成に関する問題の正答率>

 過去の出題を見てみると、文章全体を大きく2つまたは3つに分ける問題が出されているが正答率は、40.1%〜71.7%である。大きく2つに分ける問題は、比較的高い正答率であるが、問題提示文が前後どちらにはいるのか判断できなかったり、分ける数が多くなると正答率は低くなっている。

 例えば、どの段落が「問題提示」なのか、「説明」なのか、「まと め」なのか等を接続語や重要語句に着目しながら、形式段落を幾つかの意味段落に分ける 学習を大切にする。 指導のポイントとして、「文と文がどのようにつながっているか」「段落と段落がどのような関係になっているか」、「接続語や指示語が文章の展開にどのようにはたらいているか」に着目をすること等が挙げられる。

段落の要点にかかわる問題の正答率>
 段落の要点にかかわる問題の正答率は、30%台から60%台の正答率である。段落ごとの中心となる語や文を的確にとらえることに課題が見られる。段落の要点を抜き出したり、意味のまとまりごとに小見出しを付けたりするなど内容を整理することが大切である。

<文の構成に関する問題の正答率>@(主語・述語の関係を問う問題)
 主語と述語が文中で離れていたり、省略されていたりする場合は、正答率が低くなる傾向にある。述語となる言葉のはたらきによる分類を問う問題は、60%台である。
 「だれが」「いつ」「どこで」「なにを」「どのように」「なぜ」等の関係を考えながら文の構成をつかんでいくことが大切である。

<文の構成に関する問題の正答率>A(修飾・被修飾の関係を問う問題)
 修飾・被修飾の問題は、「〜はどの言葉をくわしくしていますか。」という問いかけがしてあるが、「くわしくする」ということは、どういうことなのかが理解できていない誤答が目立つ。修飾をしている言葉よりも前にある言葉を選んだり、修飾語によく似た言葉から選んだりするという誤答が見られる。「どんな」「どのような」「どのように」等の関係による文の構成についての理解ができるよう指導していく必要がある。




V 説明的文章の実践例

(1) 児童の学力実態を把握する


<A小学校の小学校基礎学力診断テストの結果>
 これまでの国語科の学力実態については、4月に実施した基礎学力診断テストから次のようなことを考察した。まず、問題別に見ると、「読む」領域と「言語事項」に正答率の低いものが多い。説明文の問題では、修飾・被修飾の関係を問う問題で正答率が60%と低い。
 また、指示語や接続語を問う問題では正答率が85%である。この正答率は決して低くないが、読み取りができていない児童については指示語や接続語に関する問題での正答率が低い傾向にある。
 読解の問題では、形式段落の要点をまとめたり、全体の要旨をまとめたりする力が弱いようである。そこで本単元では、説明文の読み取りで指示語・接続語・文末表現・くりかえし語句を押さえながら段落の要点を抜き出したり、形式段落ごとに小見出しをつけたりするなど内容を整理することを大切にしたい。そのことが、単元の後半部分にある「読書新聞を作ろう」で書くことの言語活動につながっていくと考える。
<平成16年度の小学校基礎学力診断テスト個別データ整理表示ツール「こべつ〜る」の活用>
・文章構成を問う2−10の問題、要点を問う2−13の問題の正答状況を把握する。
<レディネステストの結果>
・個に応じた指導を進めていくためには、単元の学習に入る前に、その単元でつけたい力の既習学習の定着度を把握してから学習計画を立てることが必要である。(既習学習が一人一人の児童にどの程度身に付いているかを把握するために、診断的評価を実施した。) 

・この単元では、文章全体の構成を考えることと、段落相互の関係に着目しながら書かれている内容を読み取ることをねらいとしているので、その定着状況が把握できる内容のレディネステストを実施した。


(2) 習熟の程度に応じたコース別学習(3コース4グループ)

「こべつ〜る」、レディネステスト、アンケート結果をもとに4つの習熟の程度に応じたコース(発展コース、標準コース、基礎コース2つ)に分ける
基礎コース
 児童が記入しやすいワークシートを工夫しながら、「問いに対する答えの読み取り→形式段落の要約→段落相互の関係を押さえる」学習を中心に進めていくコース
標準コース
 最初に文章全体を大きなまとまりに分ける。その後、文末表現、指示語、接続語に注意 しながら段落の内容を読み取っていくコース(「はじめ」「中」「おわり」の「中」の部分 B〜Gのつながりを考えながら文章構成をつかんでいく学習)
発展コース
 形式段落の要点をまとめ、まとめの段落と全体のつながりを考える中で文章構成をつかんでいく。一人学習を中心に課題解決していく中で筆者の言いたいことを理解し、自分の経験と照らし合わせて考えるコース


(3) 単元学習の実際【標準コース】

(ア) 単元について
 3・4年生「読むこと」の目標は、「目的に応じ、内容の中心をとらえたり段落相互の関係を考 えたりしながら読むことができるようにするとともに、幅広く読書しようとする態度を育てる。」 である。「幅広く読書しようとする態度」は、1・2年生での読書体験をふまえ、3・4年生では、 読書の量的な向上と読書の分野を広げるということを意図したものである。このねらいを達成するため、単元のまとめとして、読書の成果を「読書新聞」の形で交流し合う教材(「読書新聞を作ろ う」)を置き、それを柱として単元の学習を深めていく。

 具体的には、「何を覚えているか」(説明文)と「ごんぎつね」(物語文)の学習が、目標の前半部分である「内容の中心を とらえたり、段落相互の関係を考えたりしながら読むことができるようにする。」にかかわって、「読書新聞を作ろう」での書くことの言語活動と関連していくよう工夫する必要がある。

 「読書新聞を作ろう」の指導に当たっては、児童が読みのめあてをもち、大事なことは何かを考えることを大切 にする。また、内容の中心をとらえることは読書新聞を作る上で、大きくまとめたり細部を焦点化 したりする場合にも必要なことである。
 このように、説明文や物語文での学習の成果を「読書新聞 を作ろう」の学習において「話す・聞く」「書く」力を十分に生かして紹介し合うという総合的な活動に展開していく。
   
(イ) 単元の目標
@ 大きなまとまりに分けて文章全体の組み立てを考える。     

A 段落相互の関係を押さえ、大事な言葉に着目して、内容を正確に読み取る。

(ウ) 単元の目標の趣旨
 本教材で用いられている例は、誰もが経験しているような身近な事柄でありわかりやすい。 例えば、日記をつける場合、その日のことはすぐに思い出せても、何日か前のことはなかなか思い出せずに困ることがある。また、ずっと以前のことであっても何度も繰り返して練習して 覚えた九九や野球の試合を観戦したときのことなどはよく覚えている等身近な例を用いて説明 している。このような構成と身近な例を使った文章を丁寧に読み取らせることにより、筆者の 論理をたどりながら読むという基礎的な読み方を学習させたい。
 また、本教材は、日頃さほど意識しない「覚える」という働きを取り上げ、人間の頭、心という内面的な事柄を扱っている。この学習をきっかけに児童自身も内面に目を向け、自分自身を対象化して考えることができればと考える。説明的文章の読みについては、3・4年生では「目的に応じて、中心となる語や文をとらえて、段落相互の関係を考え、文章を正しく読む」ことが具体的な目標になると考えられる。児童は、1・2年生で順序という視点で文章全体をとらえてきた。3・4年生では、部分をまとめ、つなげ、比べることを通して全体構造を理解することが要求される。
 指導にあたり、形式段落の要点を抜き出すなど内容を整理することを大切としたい。その際、指示語・文末表現・繰り返し語句を押さえながら児童が主体的に文章の「中心」をとらえることができるように指導したい。

(エ) 指導内容
○文章構成を理解する

 児童に文章構成を理解させる方法として、文図を利用する方法がある。文図とは、 長い文章を自分なりに短い言葉で置き換えてまとめることである。
 「それぞれの段落は、短い言葉でまとめると、何が書いてあるか」、そして「段落と段落は、どのような関係にあるか」、また、「どのようにつながっているか」を自分な りにまとめる(表現する)力を授業の中でつけていくことが大切である。
 このような文図を書くには、全文を読み通し、重要語句や中心文を正確にとらえることが求められる。重要語句や中心文をとらえることができたら、それらがどのよ うな関係・関連をしているかを線等で結び合ってみて、要旨を考える学習へと深めていく。

○文章構成をとらえさせるために、授業の中でぜひ取り上げたい学習内容

@ 題名読みをする
 筆者の言いたいことが最も端的表現されているのが題名である。題名を単語に分けて、ほかの言葉に置き換えたり、どのような意味をもっているのか出し合ったりする。全文を読む前に、これから読み深める教材に、興味・関心がもてるようにするのである。読まされているのではなく、児童が、これから学習する教材には、「何が書いてあるか読み進めたいなあ」と思うような問いかけや導きをしていくようにする。
◇その題名が、文章全体にどう関係しているのか考えながら読む。
題名と中心文や重要語句がどのようにつながっているかを考えてみる。
A 初発の感想を書く
題名読みをしたあと、教師の範読を聞き、初発の感想を書く。
B 読みのめあてを立てる。
 初発の感想をもとに、「自分はどんなことを覚えているのか」を出し合い、問題提示文の「わたしたちは、どのようなことをよく覚えているのでしょうか。」に結 び付ける。
 これからどんなことを読み深めていくのか、どんな言葉のはたらきに目を向けて読み深めていくのか、読みのめあてをもつように導く。
C 段落相互の関係を考える。
 ・段落の要点をおさえる。
 ・段落の関係を考える  
※要点がどんな順序で、どんなつながりになっているかを考えていくことが文章を論理的に読むことにつながる。
※段落の中の重要語句と他の段落の重要語句とを結びつけて段落の関係をおさ える。段落の中の文と他の段落の文との関係もつながりがないか考えてみる。
D 文章の構成について考える。

  
○文の中での語句の役割や、語句相互の関係に気をつけて読む

主語と述語の関係  
修飾と被修飾の関係
・「だれが」「いつ」「どこで」「なにを」「どのように」「なぜ」等の関係  
指示語・接続語のはたらきを考える。(段落のつながりにどのような役割をして いるか考 える。)
文末表現に着目(〜でしょう。〜でしょうか。〜のです。〜ですね。〜だと 考えられます。)

 

(4) 評価の進め方

 (ア)  内容のまとまりごとの評価規準
国語への
関心・意欲・態度
読む能力 言語に関する知識・理解・技能
・身近な事柄に目を向け、興味をもって説明的文章を読もうとしている。 ・段落相互の関係を押さえ、文章の中心をとらえて読んでいる。 ・国語辞典や漢和辞典の使い方を知り、難語句や新出漢字など必要に応じて活用している。
・指示語や接続語の役割を理解し、文と文との意味のつながりを考えている。
 (イ)  指導と評価の計画 【標準コース】
指導内容
と指導過程
学習活動 指導上の留意点 評   価
評価規準 支援を要する
児童への手立て
1 オリエンテーション ・オリエンテーションで今後の学習に見通しをもつ。
・レディネステストをもとに自分に合ったコースを選ぶ。
・レディネステストでは、説明的文章の読み取りに関する基本的な事項について、現時点における自分の力が分かるようにする。 ・レディネステスト等をもとに自分に合ったコースを選択している。
(国語への関心・意欲・ 態度)
【ワークシート】
・レディネステストの結果や日頃の学習状況 考慮してコース選択ができるように助言する
2 ・題名読み
・範読
・初発感想
・意味調べ
・題名について考える
・「覚えている」ということについての体験をできるだけたくさん出し合い、内容を予想する。
・初発の感想を書く。
・分からない言葉の意味を調べる。
・題名を単語に分け、内容を予想するようにする。
・経験や知識をもとに自由に考えを発表できるようにする。
・初めて知ったこと、不思議に思うこと、疑問に思うこと、もっと知りたいと思うことを初発の感想に入れるように助言する。
・学習への見通しをもち題名について考えようとしている。
(国語への関心・意欲・ 態度)
【発言、ワークシート】
・難語句について国語辞典を活用して調べている。
(言語に関する知識・理解・技能)
【ワークシート】
・共通体験をしたことを思い出させ、「覚える」ということに興味がもてるようにする。
3
(本時)
・形式段落分け


・文章構成の把握
・形式段落に分ける。

・問いかけの文を見つける
・全体をいくつかの大きなまとまりに分ける。
・題名と同じ意味を問うていることから問題提示文を見つけられるようにする。
・説明的文章の読み取りに必要な問題提示文、接続語、指示語、文末表現などに気をつけて意味段落に分けるように助言する。
・全体をいくつかのまとまりに分けようとしている。
(読む力)
【ワークシート】
・「〜か。」などの人に尋ねる言い方を思い出せるように助言する。
・これまでに学習した説明的文章を思い出させ、「はじめ、なか、おわり」の3つに分けられる ようにする。▼接続語の使い方や指示語の指し示すものを確認できるようにする。
456 内容の読み取り
・形式段落の内容を読み取る。 ・文末表現や指示語、接続語、何度も繰り返して出てくる言葉などに注意しながら読み取れるようにする。
・形式段落の中で文の軽重を考え、中心文を見つけられるようにする。
・中心文以外の文から内容を読み取るのに必要な言葉を探し出せるようにする。
・重要語句を見付けて形式段落の内容を読み取っている。
(読む力)
【ワークシート】
・何度も繰り返し出てくる言葉や題名に関係のある「思い出す」「覚 えている」などの言葉 に着目して読み取れる ようにする。
7 ・段落と段落のつながりを考える。 ・なかの部分(B〜G)の内容のつながりを考える。 ・文末表現や指示語、接続語に注意しながら段落と段落のつながりを考えられるようにする。 ・語句に着目して段落と段落のつながりを考えている。(読む力)
  【ワークシート】
・文末表現、指示語、接続語に注目し、その使い方を理解している。
 (言語に関する知識・理解・技能)
  【ワークシート】
・前時までの学習をもとに自分の考えを持って段落と段落のつながりを考えられるようにする。
8 ・H段落の読み取り
・文章全体の要旨の把握
・H段落と全体のつながりを考える。
・文章全体の要旨をつかむ。
・H段落でまとめられていることが「なか」(B〜G段落)のどの部分を指し示しているのか 要約文をもとに考えられるようにする。
・前時までに作った要約文をもとに全体の要旨をつかめるようにする。
・要旨につながる重要語句を落とさないでまとめている。
   (読む力)
   【ワークシート】
・文章全体における段落の役割を理解している。
 (言語に関する知識・理解・技能)
 【ワークシート】
・H段落の重要語句に着目させて段落とのつながりを考えさせるようにする。



(ウ) 展開例(第3時)
@ 目標
指示語や接続語、文末表現に注意して全体をいくつかの大きなまとまりに分けることができる。 (読む能力)
A 展開

過程 指導内容 指導形態 主な学習活動 指導上の留意点 評価
評価規準 指導を要する児童への手立て
導入 全文音読 一 斉
個 別
一 斉
・全文を音読する ・まとまりを考えながら音読をするように助言する。
本時のめあての確認 一 斉 ・本時のめあてをつかむ。
展    開 意味段落の分け方についての話し合い 一 斉 ・全体をいくつかの大きなまとまりに分ける分け方について今までの学習経験を出し合う。 ・題名、問題提示文、指示語、接続語、文末表現などが文章を分ける手がかりの一つになることに気づかせるようにする。
意味段落分け 個 別 ・全体をいくつかの大きなまとまりに分ける。
・自分なりに根拠を明らかにしてまとまりに分けるように助言する。

・ワークシートを選択できるようにいくつか用意しておく。
・指示語や接続語、文末表現に注意して全体をいくつかの大きなまとまりに分けている。
  (読む力)
  【ワークシート】
・段落番号を書いたカードを用意し、問題提示文と関連させながら、段落番号を操作させるようにする。

考えの交流
一 斉 ・根拠を明らかにしながら文章全体をどの段落で分けたか発表をする。
・友達の分け方について、付けたしをしたり、質問をしたり する。
・根拠を明らかにさせて自分の考えを述べるようにする。 ・自分の考えと比べながらと友達の発表を聞くように助言する。
まとめ 本時の学習を振り返り 一 斉
・題名と問題提示文に着目し話題提示・説明・まとめの部分に分けて、文章構成を確 認する。
・本時の学習を振り返りながら、本時の学習へとつなげるようにする。(自己評価カード)
自己評価 個 別

(エ) 観点別評価例
評価場面 学習活動における
具体の評価規準
十分満足できる状況(A) 努力を要する状況への
手立て
・全体をいくつかの大きなまとまりに分ける。
(ワークシート)
・指示語や接続語、文末表現に注意して全体を「問題提示」「説明」「まとめ」のまとまりに分けている。
・全体を「問題提示」「説明」「まとめ」の まとまりに分け、大きく3つに分けた根拠を重要語句を抜き出したり、小見出しを付けたりして示している。
・これまでに学習した説明的文章を思い出させ、「はじめ、なか、おわり」の3つに分けられるようにする。


◎評価規準に対して「B」と判断したK男の学習状況
【K男のこべつ〜る】
【K男のレディネステスト】
 K男は、書かれている内容の大体を読み取る力があるので、「標準コース」段落ごとの中心となる語や文を的確にとらえることを重点的に指導する。
【K男の初発の感想】
 くり返し、何度も何度も言って覚えたことは、だいぶん前のことでもよく覚えている。書いてあるとおりだなあと思った。「心に強く感じたことは頭に残る」ということは、知っていた。
【第3時のK男のワークシート】

<K男のワークシートの分析>

・「『はじめ』『まとめ』の段落がどれなのか」は、理解 でき ている。しかし、5段落と6段落で分かれてい るとしてい たので、5 6 7 8段落は、4段落の「そ れは、どんなこ とでしょう。」を受けて「ずっと前に  あったことでも、すぐ  に思い出せること」の例を  示した段落であることを、要  点まとめをしながら 指導をした。


◎評価規準に対して「A」と判断したT子の学習状況
・ 小学校基礎学力診断テストもレディネステストともに全問正解。
【T子の初発の感想】
 わたしは、小さいときにせんこう花火をしていて,その火がスカートにもえうつって、やけどをしたことがあります。その時のじょうきょうはあまりくわしく覚えていませんが、その時の気持ちだけは、しっかりと覚えています。自分のスカートに火がもえうつって、その時は、とてもこわくなって走り回ったことを覚えています。  この「何を覚えているか」というお話のとおり、そのときの気持ちは強く心に残っています。
 形式段落の要点をとらえる力はついているので、自分なりに読み取ったことを自分の力でまとめていく「発展コース」で学習をする。このコースは、形式段落の要点をまとめ、まとめの段落と全体とのつながりを考える中で文章構造をつかみ、筆者の言いたいことを自分の言葉でまとめる学習をする。
【T子の一人学習】



 事例2

 事例2について

 事例1では、説明的文章の指導について、次の2つの視点から授業の在り方を探った。  
  ○ 「言葉のはたらきに目を向けながら内容を 読み取る学習をどのように進めていけばよいのか」
  ○ 「児童に『こういうところ(言葉)を見付ければいいんだ。』と気づかせるにはどのように授業を進めていけばよいのか」
 次に、事例2においては、文学的文章の指導について考えることにする。


T 文学的文章の指導で大切にすべきこと 

 まず、文学的文章を指導するに際に大切にすべきことを、次の2点から考えることにする。
  @ 本府の学力の状況から(小学校基礎学力診断テスト分析を踏まえて)付けたい力を明確にする。
  A 小学校学習指導要領の目標及び指導内容との関連から単元の指導内容を具体化する。


(1) 本府の学力の状況から(小学校基礎学力診断テスト分析を踏まえて) 


<平成15年度小学校基礎学力診断テスト京都府問題別平均正答率>
特に正答率が低かった問題
6番 指示語の問題
12番 語句の類別の理解の問題
16番 文章全体の題名を問う問題
20番 叙述をもとに想像しながら読む問題
22番 推敲・評価の問題
28番 漢字の読みの問題
 平成15年度の4年生国語の平均正答率は、72.7%である。
 出題問題の中で、特に正答率が低かった問題は、右上の6つの問題である。


 また、特に課題があると考えられるのが、次の問題である。
特に課題があると考えられる問題
20番 問題
23番 問題
25番 問題
26番 叙述をもとに想像しながら読む問題
 ※問題番号をクリックすると問題
  を見ることができます。
 これらは、すべて「叙述に即して情景や心情を読み取る問題」で、いずれも正答率が高いとは言えない。

  本府児童の状況から、次のような指導が重要であると考えられる。
「表現上の工夫や物語の展開・人物の心情の変化に注意して読み、主題について考える授業の展開」
叙述に即して内容を読み取る



(2) 小学校学習指導要領の目標及び指導内容との関連から


第5学年及び第6学年の指導内容(学習指導要領)との関連
「C 読むこと」の目標
 目的に応じ、内容や要旨を把握しながら読むことができるようにするとともに、読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度を育てる。
ウ 登場人物の心情や場面についての描写など、優れた叙述を味わいながら読むこと。
「言語事項」
 (1)-ウ 語句に関する事項 
ウ 表現したり理解したりするために必要な語句について、辞書を利用して調べる習慣を付けること。
エ 語感、言葉の使い方に対する感覚などについて関心をもつこと。
「小学校学習指導要領解説/国語編」より
 高学年の特徴
 第5学年及び第6学年ともなると、第3学年及び第4学年に比べて、様々な文章を読むことによって、多様な考えを受容できるようになり、感性も豊かになってくる。これまで学習した読むことの能力を一層充実させ、確実に身に付けるのがこの学年の大きなねらいの一つである。

  本単元で付けたい力
 ○ 登場人物の心情や場面の情景など、叙述に即して読む力
 ○ 理由や根拠を示しながら、主題について考える力



U文学的文章の指導の実際 

 Tにおいて、文学的文章の指導に当たって大切にすべき点が焦点化された。次に、これらをどのように授業に生かしていくのかということを、実践例をもとに紹介していく。


(1) 授業の構想 −5年生「注文の多い料理店」宮沢賢治(東京書籍)をもとに− 


単元名
人物の心の動きを想像して「注文の多い料理店」
宮澤 賢治


単元の目標
○ 物語の展開や登場人物の心情の変化に注意しながら読む。
○ 読み取ったことをもとに、主題について考える。



(2) 単元の評価規準 


国語への関心・意欲・態度 人物の心情の変化に興味をもって読み進め、感じたこと、考えたことを表現しようとしている。
話す・聞く能力 理由や根拠を明らかにして、聞き手に分かりやすく話している。
話の内容を正確に、自分の考えと比べながら聞いている。
読む能力 表現上の工夫や、物語の展開・人物の心情の変化に注意して読み、主題について考えている。
言語についての知識・理解・技能 理解する必要のある語句について辞書を利用して調べている。


(3) 単元指導計画 


指導内容 学習活動 学習活動における具体の評価規準等
(観点)評価規準
 <評価の方法>
十分に満足できる
と判断される状況
努力を要する状況
への手立て
・題名について話し合わせる。

初発の感想を書く。
(「おもしろい」「不思議だ」と思ったことを中心に感想を書かせる。)



全文を通読して物語を読んだ感想をまとめる。
(関)題名について感じたことを発表し、書いている。
    (発表・ワークシート)

(言)辞書を利用して難語句を調べている。

<ノート>
・注文や、紳士の言動、情景描写を例示しながら発表し、書いている。

・辞書で調べたいくつかの意味から、適切な意味を選んでいる。
・おもしろかったり、不思議だったりすることがつかめていない時には、指導者が提示した事柄について考え、書くように促す。

・読みを深めるために必要な語句を提示して調べさせる。
・物語の流れがつかめるようにする。



学習計画を立てさせる。
・扉と書かれた言葉の順番を理解する。

・感想をもとにした話し合いから学習計画を立てる。
(関)自分の学習方法を見付けている。


<ノート>
・自分の学習方法を見付け、学習の進め方について考えている。 ・自分や友達の感想をもとにして、学習方法を考えるように助言する。
表現の良さに注目して感じたことを交流し合う。

面白い表現、工夫している表現を書き出し、感じたことを交流する。
(読)面白い表現、工夫している表現に線を引き、しんしの人柄、心情について感じたことを書いている。

<ノート>
・面白い表現、工夫している複数の表現に線を引き、しんしの人柄、心情を多面的に捉えている。 ・面白い表現、工夫している表現を紹介し、しんしの性格や人柄を考えるようにさせる。
・二人の言葉や様子から人柄、心情を考えさせる。 二人の紳士の言葉、様子から紳士の人柄、心情を読み取る。 (読)叙述に基づいて、紳士の人柄、心情について読み取っている。

<ワークシート>
・重要語句等を含めながら、叙述に基づいて紳士の人柄、心情について読み取っている。 ・紳士の言葉を手がかりにするなど、ヒントを提示する。
・戸の言葉@〜Cと二人の紳士の言葉、様子に着目させ、心情を読み取らせる。
・戸@〜Cの言葉と二人の反応から心情を読み取る。 (読)戸の言葉と紳士の心情をまとめている。

<ワークシート>
・何でも自分の都合良く解釈するしんしの勝手さをまとめている。 ・戸の言葉とそれに対するしんしの解釈に線を引くようにさせる。
・戸の言葉D〜Gと二人の紳士の言葉、様子に着目させ、心情を読み取らせる。
・戸D〜Gの言葉と二人の反応を書き出す。 (読)戸の言葉と紳士の心情をまとめている。

<ワークシート>
・何でも自分の都合良く解釈する紳士の勝手さをまとめている。 ・戸の言葉とそれに対する紳士の解釈に線を引くようにさせる。
・戸の言葉H〜Jと二人の紳士の言葉、様子に着目させ、心情を読み取らせる。
・戸H〜Jの言葉と二人の反応を書き出す。 (読)戸の言葉と紳士の心情をまとめている。

<ワークシート>
・何でも自分の都合良く解釈する紳士の勝手さをまとめている。 ・戸の言葉とそれに対する紳士の解釈に線を引くようにさせる。
戸の言葉K〜Lと二人の紳士の言葉、様子に着目させ、心情を読み取らせる。
戸K〜Lの言葉と二人の反応を書き出す。 (読)戸の言葉と泣き出したしんしの心情をまとめている。

<ワークシート>
・真相をようやく悟ったしんしの恐怖について、心情の変化をまとめている。 ・戸の言葉とそれに対するしんしの解釈に線を引くようにさせる。
・戸の内側の会話を聞く二人の紳士の言葉、様子に着目させ、心情を読み取らせる。
・戸の内側から聞こえる会話から二人の心情を考える (読)会話を踏まえて泣き出した二人の心情を考えている。

<ワークシート>
・会話を踏まえて二人の心情を考え、特に恐怖心を与えた言葉についてや、徐々に恐怖の頂点に達する心情を追っている。
・怖いと思う言葉を示唆して、二人の気持ちを考えるように促す。
10 ・助かった後の紳士の言葉、様子に着目させ、心情を読み取らせる。
・助かった後、紳士が出来事についてどう考えているのかを中心に書く。
(読)二人の紳士の心の変化を読み取っている。

<ワークシート>
・二人の紳士の変わったところ、変わっていないところを、前後の場面に対応させながら読み取っている。
・ノートやワークシートを見直し、言葉や態度の変化について考えさせる。
11 ・紳士の心情の変化をたどりながら、「注文の多い料理店」の主題について考えさせる。
「注文の多い料理店」の主題について考え、発表の準備をする。 (読)登場人物の言動に注目して、主題を考えている。

<ワークシート>
・登場人物の言動からうかがえる作者の思いについて考えている。 ・「主題」を難しく捉えている時は、自分の興味に沿って考えた事を書くようにさせる。
12 ・「注文の多い料理店」の主題について発表しあい、学習のまとめをさせる。 ・「注文の多い料理店」の主題について発表し、考えたことを交流する。 (話)考えが伝わるように話している。 ・話の組み立てに工夫をして話している。 ・順序立てて話せない場合は、まず主題、次に設定理由を話すようにさせる。


(4) 単元の観点別評価表 


評価の観点 国語への関心・意欲・態度 話すこと
聞くこと
読むこと 備考
学習活動における具体の評価規準 題名について感じたことを話し書いている。 自分の学習方法を見付けている。 観点別評価総括 考えが伝わるように話している。  観点別評価総括 面白い表現、工夫している表現に線を引き紳士の人柄について感じたことを書いている。 叙述に基づいて紳士の人柄・心情について読み取っている。 「戸」の言葉と紳士の心情をまとめている。 特記事項
1 A君
2 Bさん


評価の観点 読むこと 言語についての知・理・技
学習活動における具体の評価規準 「戸」の言葉と紳士の心情をまとめている。 「戸」の言葉と泣き出した紳士の心情をまとめている。 会話を踏まえて、泣き出した二人の心情をまとめている。 二人の紳士の心の変化を読み取っている。 登場人物の言動に注目して主題を考えている。  観点別評価総括 難語句を辞書を利用して調べている。 観点別評価総括 特記事項
1 A君
2 Bさん



U 事例2の資料


(1) 平成15年度小学校基礎学力診断テスト6年国語
   −特に課題があると考えられる問題
− 

問題
20
 上の文章C「きっと」とありますが、さおりのどのような気持ちが表れていますか。 正答
  サ 見たような気がする。
  シ もしかしたら見たかもしれない。
  ス かならず見たはずだ。
  セ たぶん見ただろう。


正答率
39.8%

問題
23
 上の文章にD「声が出そうになった」とありますが、どんなようすを表していますか。 正答
  ハ あきらめた
  ヒ よろこんだ
  フ むっとした
  ヘ びっくりした  


正答率
72.5%

問題
25
 上の文章にH「話しかけてみた。」は、「話しかけた。」とくらべ、さおりのどんな気持ちがこめられていますか。 正答
  ア かならず拾ってきてほしい。
  イ 拾ってきてくれるかもしれない。
  ウ きっと見つけてみせる。
  エ ぜったい見つからないだろう。    


正答率
67.7

問題
26
 上の文章にI「まるで、話が通じたみたいだった。」とありますが、さおりは、どうしてそう思ったのでしょう。 正答
  カ やもりがさっとあなの中に消えたから
  キ やもりがさおりを見上げているようだったから
  ク やもりがひょいとあなからあらわれたから
  ケ さおりがやもりをにがてではないから    


正答率
64.7


(2) 初発の感想例  


○ 初発の感想を書かせる。 ○ 初発の感想から表現の特徴に着目させる。
 読書体験の豊かな児童である。人物描写や状況描写を読み取り、ストーリーの展開のおもしろさを楽しんでいる。叙述に即した読み取りができる児童である。  物語の展開のおもしろさを味わいながら読み取っている。また、作品の表現の特徴をとらえ、おもしろさを感じたわけも意識している。読書体験の豊かな児童である。

○ 読むことや言語事項の指導方針を明確にする。 ○ 初発の感想を分析して指導計画を立てる。
 〜と思った。〜と思う。という表現を繰り返し使い、筋にそって記述した感想文である素朴な思いで綴られた感想である。叙述に即した読み取りが希薄であり、また、学年相当の漢字が使用されておらず、表記や知識の面でも指導が必要である。  不思議に思ったことを感想として書いている。物語の展開や叙述に即した読み取りになっておらず、印象に残った部分的な読み取りである。

○ 学習の目当てを設定する際、素朴な疑問も取り上げる。 ○ 物語全体から二人のしんしの人柄を読み取る。

 おもしろいなと感じてこの作品と出会っている。素朴な疑問を二つ取り上げており、読み取りのめあてを設定する際の出発点となる。
 しかし、叙述に即した読み取りができるよう配慮が必要であり、漢字を使って主述関係を意識した文章が書けるよう導きたい。

 不思議に感じたことを中心に自分と照らし合わせて読みとっている。登場人物の様子に関心があり、いろいろと考えを巡らせながら読んでる。 
 物語の展開の特徴や描写のおもしろさに気づくよう導きたい。


(3) 第八時ワークシート例 





(4) 主題の読み取り例 


○ 主題について考え、発表の準備をする。



主題の読み取り
「二人のしんしは、なぜこんなこわい目にあったんだろうね。」
○ 主題について発表し、考えたことを交流する。
これは、夢ではなく、現実でおこっているのだとわからせたかったんだろう。 友達の意見を聞いてそう考えた。 友達の発言を聞いて、新しく気づいたことは、
○ 作者は、この話を現実として見てほしくて、二人の顔をくしゃくしゃにしたまんまにした。
○ 山猫は、動物の苦しみをわかってほしかった。



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