平成18年度研究事業「地域や学校における特別支援教育体制の充実」
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7 困っているのは、だれですか?(認知や行動の特性に応じた指導)
※あるクラスの子ども自身の「困ったな・・」というつぶやきから、認知や行動の特性をつかみ、授業の中での支援を考えました。是非、最後の教子先生の声をよく聞いてください。
困っている表情の教子先生のイラスト  年生を担任している教子先生のクラスには、
「授業に集中できず、課題に取り組めないことがしばしば・・課題のプリントが提出できないこともたびたびあります。」
児童が3人もいて、教子先生は指導に頭を悩ませています。3人の話を聞いてみましょう。

 3人とも困っているようですよ。
困っている表情のせんた君のイラスト
せんた君
  ぼくは、授業中でも、いつもと違う物や人、音があると、気がつくとそっちに気がいってしまい、集中して先生の話を聞くことができません。
 じっと座っているのも、苦手です。体がもぞもぞ動き出します。退屈すると手遊びしたり、自分の席を離れてしまうこともあります。
困っている表情のいく子さんのイラスト
いく子さん
  わたしは、はさみを使ったり、定規でまっすぐに線を引いたりする細かい作業は苦手です。上手くできないので、いらいらして、最後まで、できないこともよくあります。
困っている表情のそうご君のイラスト
そうご君
  ぼくは、昆虫が大好きです。だから、理科で昆虫の勉強をした時は、図鑑でいっぱい調べました。でも、国語の授業は大嫌い。先生の質問の意味がわからないことも多いし、ずーと続くのかと思うと、とても退屈で・・昆虫の図鑑を見たり、絵を描いて授業が終わるのを我慢しています。


■ 教子先生は、コーディネーターの先生と3人の支援方法について、個別の指導計画を立てました。

せんた君の場合
困っている表情のせんた君のイラスト
 自己コントロールの力が弱く、注意や集中が続かず、気が散りやすいようです。
 <支援方策>
   ▼刺激に影響を受けやすいので、授業に集中できる環境
   ▼書く・読む・考える・発表するなどの活動を集中時間に合わせて
    組み合わせたテンポのよい授業展開
いく子さんの場合
困っている表情のいく子さんのイラスト
 手先の巧緻性が低く、一生懸命やっているのですが、とても不器用です。
 <支援方策>
   ▼マス目の大きいプリントなど作業しやすいサイズや材質の用意
   ▼本人が達成意識を持てる活動の目標設定
そうご君の場合
困っている表情のそうご君のイラスト
 興味関心が狭く、自分の興味やルールで行動してしまいます。
 周囲の状況を把握したり、場に応じた行動がとりにくいようです。
 <支援方策>
   ▼状況把握をたすけるために、指示や課題提示の明確化
   ▼授業の流れを示し、見通しを持って授業に参加


■ 同じような教室での様子でも、その要因によって支援方法は異なってきます。

「表とグラフ」の授業をのぞいてみましょう。
 
本時の目標   表をもとに1目もりが1の棒グラフをかくことができる。【表現・処理】
本時の展開(4/7)

指導内容 指導形態 主な学習活動 ・指導上の留意点
◎個に応じた手立て
教材・教具等 評価



1 本時の課題を
  確認させる。
一斉 ・表を見て棒グラフを
 かくという課題を
 つかむ。
◎今日の学習の流れを確認し、
 黒板に掲示する。

今、ここまで勉強が進んだ、
次は・・ってわかるから、
いらいらせずに
勉強に集中できるな。
明るい表情のそうご君のイラスト
表とグラフ  



2 棒グラフのかき方
  を理解させる。
  (「好きな昆虫」)
個別

一斉
・自分のめあてを持つ。

・「かき方」に示されて
 いることがグラフの
 どこに示されているか
 を確かめる。
◎自分のめあてを考えさせる。

・「かき方」カードを提示して
 グラフのどこかを確かめさせる。

◎興味を持って取り組める
 題材を使う。

書き方カードがあるから
何をするかよくわかるよ。
明るい表情のそうご君のイラスト
手順を示した
カード

ワークシート
【表現・処理】
○順序よく棒グラフを
 かくことができる。
【発言・ワークシート】


3 棒グラフのかき方の
  習熟を図らせる。
  (「けがをした場所」)
個別ペア



個別
・ハンドベースボールと
 ポートボールの棒を
 かく。

・「けがをした場所」を
 棒グラフにかく。 
・となりの子とペアで、かき方に
 誤りがないか確認させる。

いろんな活動があるから、
いそがしくて、
退屈してられないよ。
明るい表情のせんた君のイラスト

・表をもとに必要な目もりの数を
 考えさせ、1目もりが1であれば
 よいことに気付かせる。

・グラフ用紙を大中小と用意をする。   

◎棒の上限にきちんと線を引いて
 書かせ、個別指導をする。

細かい作業は苦手です。
今日は、棒グラフの一番上
だけは、正確にかくのが
目標!
これなら、大丈夫!
一番大きいグラフ用紙を
選んだからかきやすいよ。
明るい表情のいく子さんのイラスト
  努力を要する状況
への手立て

・個別指導をし、
 手順を再確認
 させる。

十分に満足できると
判断される状況

・棒グラフを
 見やすく正確に
 かくことができる。




4 本時のまとめを
  させる。




一斉


個別


・学習したことから
 クイズを出し合う。

・本時のふりかえりを
 書く。


・1目もりが1でない棒グラフを
 かくことを知らせる。
ワークシート  
5 次時の学習内容を
  知らせる。
一斉 ・次時の予告を聞く。       

 ● 教室はすっきり整頓、特に前の黒板は掲示物を減らしたので、余計な物に気が散らなくなったようです。
 ● テンポのよい授業展開や簡潔な説明、授業の流れの提示により、授業に集中しやすくなったようです。
 ● グラフ用紙を大きくするだけ、とてもかきやすくなったようです。
教子先生から

明るい表情の教子先生のイラスト
 最初は、3人のために考えた支援ですが、どれもクラスの児童全体にとっても有効な支援であることを、子ども達の様子から実感しました。特別な支援は特別な子への活用にとどめず、多くの児童に活用するようにしています!
 困っていたのは、私ではなく、子ども達。適切な支援ができる教師になります!!

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