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W 国語力の育成を考える
 10-1 発達段階に応じた国語力の育成
発達段階に応じた国語教育の具体的な展開   教育内容を考えるとき、発達段階の視点を欠かすわけにはいきません。国語力の育成についても同様で、発達段階に応じた目標と内容、そして指導方法を考える必要があります。文化審議会答申の「これからの時代に求められる国語力を身に付けるための方策について」の第1の1「国語教育についての基本的な認識」の中でも、「発達段階に応じた国語教育」の必要性について書かれています。  
 つまり、「国語力の効果的・効率的な向上を目指すためには、一人の人間がどのように発達していくのかという観点から、各発達段階でどのような国語教育を行うべきかを考えていく必要がある。」として、発達段階を踏まえて具体的に考えていくことが大切であるとしています。
発達段階に応じた「重点を置くべき国語教育の内容」   さらに、文化審議会答申では、「発達段階に応じた国語教育の具体的展開」の中で、発達段階に応じた国語教育を考えていくためには、「脳科学の知見を参考にすることも有効」であるとして次のように述べています。
   生後から3歳にかけては前頭前野の神経細胞に急激な成長が見られるが,その後大きな変化が見られなくなる。前頭前野に再び大きな変化が表れるのは,小学校高学年から中学にかけてです。この時期には,論理的思考力・表現力(表す力)にかかわる前頭前野に血流・代謝の大きな変化が起こり,成人と同じような脳の使い方をするようになる。論理的思考力・表現力の教育・指導は,上述の前頭前野の発達段階を踏まえて,「3歳までの乳幼児期」「3歳〜11・12歳(小学校高学年くらい)まで」「13歳(中学生)以上」と3段階に分けて考えることができる。
 「国語力を構成する能力等」の中で「国語の知識」の一つとして位置付けられている語彙の力は側頭葉と関係しています。側頭葉は前頭前野と違って,早くから大人と同じような働きをするようになるので,語彙力の教育・指導は子供の時から大人になるまで,直線的に同じ調子で行ってもよいと考えられます。なお,「聞く力」についても,側頭葉が関係しているので,語彙力と同じように早い時期から育てていくことが可能である。
  要するに、
○ 論理的思考力・表現力(表す力)は前頭前野とかかわっている。
○ 前頭前野の急激な成長は、「生後から3歳にかけて」と「小学校高学年から中学にかけて」である。
○ 論理的思考力・表現力の教育・指導は、次の3段階に分けて考えることができる。 「3歳までの乳幼児期」「3歳〜11・12歳(小学校高学年くらい)まで」「13歳(中学生)以上」
○ 語彙力と聞く力は側頭葉と関係している。
○ 側頭葉は、早くから大人と同じような働きをする。
○ 語彙力と聞く力の指導は、早い時期から直線的に行ってもよい。 ということかと思われます。  
 このような、発達段階による特性を踏まえて具体的な教育内容を考えることで、より効果的・効率的な指導が可能になると考えられます。


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 10-2 3歳から11・12歳(小・高学年)の発達段階に応じた国語力育成
国語力育成における基礎作り期 3歳〜11・12歳(小学校高学年くらい)は、文化審議会答申によると「国語力育成における【基礎作り期】」です。この時期は、「語彙力など言葉の知識をつかさどる側頭葉や頭頂葉などの神経細胞が成長」する時期にあたります。
幼児期の国語力の育成  そこで、幼児期ならば「読み聞かせ」をしたり、読める子なら読書によって言葉の数を増やしたりすることが大切です。また、「京都府子どもの読書活動推進計画」には、幼稚園や保育所で行われている取組例が紹介されています。それらを参考に、情緒力・想像力を育てたり、「言葉と社会や事物との関係」を習得させたりするために、たくさんの経験をさせるようにしたいものです。 
小学校での国語力の育成  同答申では、「小学校では、『話す・聞く』に加えて『読む・書く』の『繰り返し練習』により、国語力の基礎となる知識を確実に身に付けさせることが重要である。特に、『読み』の学習を先行させることで、言葉の知識(特に「語彙力」)を増やすことに重点を置くべきである」としています。
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 10-3 13歳(中学生)以上の発達段階に応じた国語力育成
国語力育成における発展期  文化審議会答申によると、13歳(中学生)以上は、「国語力育成における【発展期】」で、個人差はあるものの「思春期を迎えたころから、前頭前野の神経細胞は再び急激な成長」を始めるとし、「自らの経験など様々な情報を複合して、論理的な思考を本格的に展開することが可能」となり、「『情報処理能力』が飛躍的に伸びる時期」であるとしています。
中学校での国語力の育成  そこで、読書指導を推進し、さまざまな体験を積ませることによって、論理的思考力をはじめとする多様な力を育み、国語力の育成につなげることが大切です。



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