(2) 不登校への対応に求められる「コーディネート力」
「コーディネート」とは、「関係者間の連携や調整」です。
不登校への対応のコーディネーター的な役割を担う教師の実践的指導力とは、およそ次のようなものであると考えられます。
Fig.2のように、一つには校内の教職員の「不登校の理解」を深化、促進するための「見立て」や「研修・研究」。もう一つが教職員の「不登校への対応」を効果的、組織的に進めるための「関わり」と「連携・啓発」から成り立っていると思われます。もちろん、「理解」することそのものが「対応」なのであり、「対応」しながら「理解」が深まるものですから、「理解」と「対応」は円環的、相乗的に進んでいくものであると言えます。
また、「個」に関わる研究実践的な役割としての「見立て」や「関わり」と、機に応じて指導・支援のための情報を得て、タイムリーな研修の機会を提供する役割としての「連携・啓発」や「研修・研究」も求められるところです。
不登校への対応を中心とした教育相談のコーディネートにおいては、これらの4つの「仕事」(役割)を、校内の個々の教師、SCをはじめとする他の職員の適性や考え方、力量に合わせて、バランスよく適切にコーディネートする実践的指導力が求められています。
そのコーディネートの中心となるのが「連携・啓発する」力と言えるでしょう。
スクールカウンセラーや地域の関係機関の専門家や、ボランティアなどの非専門家等のマンパワー(人的資源)を効果的に活用しながら、見立てや面接にかかるスーパービジョン、コンサルテーションを受けたり、各種研究会等に参加して研修の情報を提供したりするなど、効果的に、組織的に、そして円滑に進めることが必要です。
理 解
講演会 心理アセスメント
各種研究会等 研修・研究 見立て
コンサルテーション 集 団 「実践的指導力」 個 スーパービジョン
危機介入 コーディネート
連携・啓発 関わり
リエゾン 心理療法
対 応
Fig.2 「教育相談のコーディネートに求められる教師の実践的指導力」
これら4つの「仕事」は、Fig.3のように組織マネジメントの手法を参考としたPDCAサイクルと考えるとわかりやすく、このサイクルを円環的に、継続的に機能させていくことにより、教育相談の実践や教育相談部(生徒指導部、保健部等)の在り方全般について、組織的・計画的に有効な検証と見直しをすることができ、教育相談の実践の質を高めていくことができます。
P(教育計画の設定)→D(教育活動の推進)→C(点検・評価) →A(結果の分析と改善)
|
P(見立て) →D(関わり) →C(連携・啓発) →A(研修・研究)
|
Fig.3 「教育相談におけるPDCAサイクル」
ところが、ここで大事なことは、教育相談においては、上記の Fig.3のようにPDCAサイクルのとおりに必ずしも進んでいかないことも多くあるということです。
たとえば、新年度が始まり、新しいクラス担任になったとすると、きちんとした「見立て」をする間もなく、「関わり」からスタートします。「関わり」の中から「見立て」をすることになります。また、例えば長期の不登校の子どもで家庭にひきこもっていて、教師とは会えないというような場合、関係機関や保護者との「連携」から教育相談の実践がスタートしていくとも言えるでしょう。どこからスタートしても、次のステップにつなぐことが必要です。
授業や学校行事等のように、教育相談の実践は計画的、意図的に進められないことも多くあり、教育実践の流れをフローチャートとして表すことが難しいと言えます。