実践編 |
その2 2−(3)以降 | 実践編その1へ |
(3) 単位時間ごとの指導内容・評価規準を考える |
題材の指導目標、評価規準を設定し、児童の実態等を考慮して単位時間ごとに具体化した指導内容と評価規準を考えます。 |
ア 指導内容を考える上での留意事項 | |
(ア) 目標達成のために指導内容の明確化を図る 学習指導要領の表現領域の(2)「曲想や音楽を特徴付けている要素を感じ取る」ことや(4)「音楽をつくって表現する」内容、鑑賞領域の「感じ取る部分」の内容を大事にした中身でねらいを設定するとはっきりした指導内容になりやすいです。 |
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(イ) 指導と評価を一体のものとして考える 設定された評価規準の中身は、指導により付けたい力でもあると考えられます。したがって、何を評価するのかという観点からねらいを考えると一体のものとしてとらえられ、考えやすいです。 |
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イ 評価規準を考える上での留意事項 ●実践例へ | |
(ア) 学習活動における具体の評価規準は指導内容と整合性をもたせることが大切です。また、評価をする場合、何を(評価項目)、どのようにして(評価方法)、いつ(評価場面)を明確にしておきます。 | |
(イ) 1時間ごとの具体の評価規準の結果を集約し、総括に生かせるようにする必要があります。したがって題材全体を見渡した時、題材ごとの目標(4観点)がきちんと入っていることが大切です。 | |
(ウ) B、A、Cと評価する判断の手がかりが必要です。特にCと判断する場合には、その児童がBになるための具体的な指導方法を具体的に考えておく必要があります。 まず、授業は「おおむね満足できると判断されるもの」→Bを目指すものです。Aの「 十分に満足できると判断されるもの」の児童についてはBに含まれると考えられます。したがって、まず評価するのはBか「努力を要すると判断されるもの」→Cかという判断が必要です。AについてはどういうところでAと判断するかを明らかにする必要があります。この場合キーワード的にいくつか示しておくと判断しやすく児童のよさや、可能性を多方面から引き出せます。 |
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(エ) 学習活動における具体の評価規準については、児童の実態に合わせて各指導者が創意工夫し設定します。1単位時間で評価できる項目は1〜2つぐらいが適当です。ただ、活動内容によってはいくつかの評価が関連して評価できる場合もあります。 |
(4) 本時の展開を考える ●実践例へ |
本時の目標(指導の中身)と何を評価するのかをはっきりさせます。 指導内容に関しては目標を達成するためにどの部分に時間をかけてじっくり取り組ませるのかを明らかにしておくことが大切です。 その場合特に教師の働きかけは、児童が生き生きと活動するために重要なものとなります。個に応じた様々な言葉かけや行動を多く考えておくことで大切です。自分がどのような働きかけをすれば、児童が生き生きと活動するかということを、整理しておくことが大切です。教師が自分から絶えず新しい働きかけを模索することも大切です。 |
<成果> |
(1) 評価の視点による指導内容の明確化 指導計画に評価を書き入れ、指導の始めにきちんと頭に入れておくことで、指導する内容をはっきりと意識することがふえてきました。 |
(2) 他教科への評価意識の向上 全教科すべての単元で評価活動を実践することはなかなかむずかしいですが、音楽科で実践した評価活動の意義を他の教科に生かそうという意識が生まれてきました。 |
(3) 肯定的評価の推進 児童の主体的な学習を大切にする授業は、準備も含めて教師側も非常にエネルギーがいることがわかりました。しかし児童のよい部分を評価する機会が増えたことにより、児童もほめてもらえることで意欲的にがんばれる姿が多くなりました。 |
(4) 個に応じた指導の重要性の再確認 この題材での音のイメージに合わせた表現をうまく表す方法は児童一人一人違います。(身体表現の得意な子、言葉による表現が得意な子、おとなしいが文章による表現が得意な子・・・など様々でした。) したがって、いろいろな表現活動の場を多く設定し、個に応じた指導をすることが大切であることが改めてわかりました。 |
(5) 体験的な学習の場による児童の変容 低学年の児童はまだ楽器の正しい扱いも知らないので、まずどんな音が出るのかいろいろなたたき方を試して鳴らしてみたいという行動に出ます。(教師側は楽器が壊れないか気になりますが・・・)しかし、授業で実際に自分で音を出すという体験を通して、だんだん「音」に対する意識が生まれてきて、小さい音に対するこだわりを見せた子、同じ楽器でもたたき方によって音色が違うことに着目した子などが出てきました。また、体験を通して楽器の扱い方も変わってきて、丁寧に扱うことの大切さを自分で感じ取る児童が増えてきました。 |
(6) 継続的な取組による児童の意識変化 この題材は自分の感じた「音」をつくっていくという内容であり、皆がすぐに満足できるというものではなく、個人差があることが感じられました。しかし継続して取り組むことで、それぞれが自分の「音」に対するこだわりとともに、友達の音に対しても集中して聴こうという態度が生まれてきました。 |
<課題> |
(1) 見えにくい観点の評価の難しさ 音楽的な感受と表現の工夫の評価については、音楽活動としては表面に表れにくく、一人一人しっかりとまたじっくりとみていかないとむずかしく、工夫により評価できる活動の場の設定を意識して作ることが大切だと感じました。 |
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