図画工作科における評価のポイント

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実践編


 1 授業改善に向けて

  第2学年の題材「なにになるのかな」を通して、育成する資質・能力を明確にし、指導と評価の関連を重視して授業改善を行い、よりきめ細かく個に応じた指導を進めたいと考えた実践例です。
(1) 題材について
 この題材は、学習指導要領では、「A表現」の(2)「絵や立体に表したり、つくりたいものや工作に表したりする」にあたるもので、材料から思い付いたものをつくるものです。
 そこで、はじめにこの題材から考えられることをいくつかあげてみました。
・ 材料を集める段階から楽しむ。
・ 材料の色や形、感触などから楽しい思い付きができるよう自然物を使う。
・ 児童が独自の発想をし、自信をもって表すことができるようにする。
・ 児童が自分で選び、試し表すことができるようにする。
(2) 題材の目標について
 学習指導要領や「評価規準の作成、評価方法の工夫改善のための参考資料」(国立教育政策研究所)などを参考に題材の目標を考えました。「評価規準の作成、評価方法の工夫改善のための参考資料」では、「A表現(2)」の評価規準やその具体例として、「造形への関心・意欲・態度」「発想や構想の能力」「創造的な技能」の3つの観点があります。また、「B鑑賞(1)」には、「造形への関心・意欲・態度」「鑑賞の能力」の2つの観点があります、これらを合わせて下の4つの目標を設定しました。題材の中で鑑賞の活動も行いたいと考えたからです。
@ 自然物に関心をもち、その面白さを楽しむ。(造形への関心・意欲・態度)
A 自然物の形や色などの面白さから、つくりたいものを思い付き発想を広げる。(発想や構想の能力)
B つくりたいものに合わせて、作り方を試しながらつくる。(創造的な技能)
C 材料の面白さを感じ取り、作品について話したり、友人の話を聞いたりして楽しく見る。(鑑賞の能力)
 @にある「その面白さ」は、自然物の形や色、手触り、印象などの特徴を意味し、児童に分かりやすく話せるように、「面白さ」と表現することにしました。
 また、「楽しむ」は、様々な材料の形や色などに関心をもって見ることで、今まで気付かなかったことに気付いたり、新しい発見をする楽しさのことです。
 Aにある「つくりたいものを思い付き」は、「つくりたいもの」つまり目当てとなるもので、A表現(2)では重要だといえます。しかし、低学年の児童は、思い付くことが次々に変わっていく傾向があると言われています。そこで、単なる気まぐれで変わらないよう、はじめのいろいろな思い付きから、気に入った思い付きを児童が自分で選択し「つくりたいもの」を決めます。その「つくりたいもの」に合わせて「発想を広げる」ようにします。つまり「つくりたいもの」の周囲の様子や関連したものなどを考えるといった意味で「発想を広げる」としました。


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2 指導計画・評価計画の作成


(1) 指導計画と評価計画の概要を考える

 
  指導と評価は表裏一体の関係にあります。従って、常に題材の目標に立ち返り指導計画と評価計画を考えました。
 
  指導計画については、全体で5時間の設定とし、事前に他教科と関連をもたせながら、児童にとって親しみある近くの海岸で材料集めをする時間を設けました。

  また、一人一人の児童が、独自の発想をし自信をもって表すことができるようにして、充実感を味わわせたいため、「発想や構想の能力」を十分発揮できるように考え右のような概要を作成しました。

  また、評価計画についても指導に合わせてその概要を考え、「発想や構想の能力」に重み付けをしました。
  「造形への関心・意欲・態度」は、材料への関心に始まり、活動への意欲今後への広がりを評価したいと考えました。

  題材の各段階において、評価することで、児童の状況をできるだけしっかりと把握し、目標としたことが実現できるよう、個に応じた指導を充実させたいと考えました。
 
  以上のように考えて、実際の指導計画・評価計画を作成しました。




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(2) 指導計画と評価計画の作成

     指導計画・評価計画の作成については、学習指導案の形で示します。




<考え方>   ※ 指導案に戻る
「十分満足できると判断されるもの」(A)の考え方
  Aの状況を実現していると判断する要点について、「評価規準の作成、評価方法のための参考資料」(国立教育政策研究所)には、次のような説明があります。
「十分満足できると判断されるもの」(A)は、「おおむね満足できると判断されるもの」(B)で働かせる資質・能力を総合的に、関連的に、主体的に、継続的に働かせている状態をいう。
総合的  子どもたちの生活そのものといわれる遊びのもつ教育的な意義、例えば、楽しさやユーモア、ゆめ、自由な活動、試行、冒険心、共同性などを働かせて、新しいアイデア、表し方の工夫、よさや美しさの意味などを自らつくりだすこと。
関連的   すでにもっている知識や技能を、新しい経験の機会に自分らしい方法で試したり、他の学習で経験した造形体験を生かしたりして、資質や能力を関連的に働かせること。
主体的   表したいことに、自分がつくりつつあるものや表し方に新しいことを考えて付け加えたり、自分の作品や扱う材料・用具に、関心や愛着、こだわりをもち、納得できるように取り組むこと。
継続的   思いをもとに、自分が納得いくように、対象に働きかけたり、働きかけを受けたりしながらもてる力を働かせ、表し方の工夫を続けたり、完成を楽しみにつくり続けたりすること。



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3 実践を通して明らかになったこと


(1) 成果
 目標の明確化の必要性
  題材を通して、「児童に何を指導し、どんな力を付けたいか」は、これまでから考えて指導にあたってきたことです。しかし、この題材を通して「児童に何を指導し、どんな力を付けたいか」といったねらいや目標ができるだけ明確になるよう検討しました。学習指導要領(解説)を当該学年だけ読むのではなく、他学年と比較し、各内容について他学年との違いや関連性について明らかにしました。そうすることで、その学年の指導のポイントとなる事柄が見えてきました。また、「評価規準の作成、評価方法の工夫改善のための参考資料」(国立教育政策研究所)を参考にし、児童の目標の実現状況をできるだけ具体的にイメージするようにしました。
  その結果、指導するポイントが絞れ、評価する内容も明確にすることができました。
 指導と評価の一体化の重要性
  これまで図画工作科の評価は、結果や作品の出来栄えを評価することに陥りがちでした。今回、指導計画を立てながら同時に評価計画を立て、何を指導し何を評価するのかについて検討しました。4つの観点のうち「創造的な技能」の評価については、これまでの経験が生かせると感じましたが、残りの3観点については指導内容を明確にすることで、何時、どのような場面で、何を評価すれば良いのかが明確になりました。そのことは、指導する場合においても個々の児童の状況を把握することにも、役に立つものでした。
 その結果、学習の過程を評価することで、最終的にできた作品を通して評価するだけでは十分に見えてこない、児童の資質・能力をとらえることができたと考えます。
(2) 反省点及び今後の課題
  評価の場面とその内容が適切であったか、検討する必要があります。そのためには多くの事例
  を集め、それらを照らし合わせながら公平性、信頼性、客観性、妥当性について分析することが必
  要と考えられます。
  「C」の児童に対する指導の手立てについて、適切であったかどうかを検討し、すべての児童に
  目標とする資質・能力を身に付けさせる指導の工夫をしなければならないと考えます。




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