「各教科、道徳及び特別活動におけるネットワーク活用の在り方について」
T 地域の概要
京都府は、日本列島のほぼ中央に位置し、南北に細長い形をしている。 北部は日本海に面し、中部の大部分は、丹波高原と呼ばれる山地で、その中を流れる河川の流域に小盆地が点在している。南部には、府内を流れる河川の合流点を要にして、山城盆地が広がっている。
本研究事業の研究推進協力校6校も北部丹後半島、中部山地、京都市街、南部京阪奈丘陵と異なった地域環境に位置し、それぞれ特色ある学校づくりに取り組んでいる。U 研究の概要
1 研究主題及び内容
(1) 研究主題 「各教科、道徳及び特別活動におけるネットワーク活用の在り方について」
(2) 研究内容
@ 各教科、道徳及び特別活動におけるネットワーク活用の在り方について
A 学校間ネットワークを活用した交流や連携の在り方について
B ネットワークを活用した学校の情報発信の在り方について
C 拠点との接続及び学校内のネットワーク管理・運営体制の在り方について2 研究経過
京都府教育情報ネットワーク(情報通信ネットワーク拠点)の整備に関わり、拠点の試運転時から接続・運用の研究を行った。
拠点の運用開始後は、各研究協力校において教科等での活用・ホームページ作成等について研究するとともに、テレビ会議システムを活用した学校間交流にも取り組んだ。
また、インターネット活用の校内体制、校内研修等についての研究を行った。
本研究を進めるにあたっては、メーリングリストを立ち上げ、研究推進協力校間の情報交換、連絡調整に活用した。V 研究の中間成果の概要
1 各教科等での活用
校種 学年・教科 利用方法及び内容
小
学
校
2
学活
テレビ会議システムを活用し、学校の様子や遊びについて交流(学校間交流) 外国の小学生と電子メールで交流 生活
郵便局の見学や仕組みについて学習し、関連させて電子メールを体験
3
国語
自分の調べたいことを、本やインターネットを利用して調べ、まとめて発表 社会
近くの商店で売られている商品が、他地域で生産され、輸送されてくることをテレビ会議を通してより深く理解
4
国語
テレビ会議を利用し他府県との学校間交流で方言の共通点や違いについて学習 学活 養護学校と電子メールで交流(交流教育)
5
社会
自動車産業についてWWWで調べ学習 伝統産業についてテレビ会議で交流し、お互いの地域の伝統産業の共通点について学習 ホームページの特性について話し合い、情報の目的や対象によって情報伝達手段が使い分けられていることを学習 理科
アメダスのデータや気象衛星の画像を活用して各地の天気の予報 学活 遠足の見学先の博物館のホームページを事前学習に利用 6
国語 WWWで「ことわざ」調べ 社会
「世界の中の日本」の学習で、日本と関わりのある国名をキーワードとして検索 理科 酸性雨についてWWWで調べたり、電子メールで質問
中
学
校
高
等
学
校
国 語
古典の学習(3年「奥の細道」2年「漢詩」)で、イメージをふくらませるためWWWを利用
社 会
地理分野の指導においてWWWを利用して、世界都市のホームページから情報を収集 歴史分野の指導においてWWWを利用して、歴史上の人物に関するページや各地博物館の情報を収集
理 科
(環境)
天文分野の指導においてWWWを利用して、各地天文台やNASA等から情報を収集 環境問題(NOx等)においてWWWを利用して情報収集するとともに、ホームページにまとめ情報発信 英 語 海外の学校とメール交換 美 術
鑑賞の学習においてWWWを利用して、各地の美術館から情報を収集 進路指導
(中学校)高校、専門学校のホームページから進路情報収集
(高 校)大学、専門学校のホームページから進路情報収集養護学校 交流教育
小・中学校とメール交換、テレビ会議による交流
2 具体的実践例(小学校)
(1) 学年、教科及び単元名 3年、社会 「私たちのくらしと商店」
(2) 本時の目標
自分たちの地域は、消費生活を通して広く国内の他地域や外国との関わりがあることについて理解する。
(3) 授業の展開
生産物はどのような方法で運ばれてくるのか話し合う。次に、給食のすしの中に入っていた「かんぴょう」が栃木県からきていることを知り、栃木県壬生小学校とテレビ会議をして、かんぴょうは「どんなものからできているか」「その作り方や苦労」「何で運ばれてくるか」などを教えてもらう。そして、大宮町で生産し「京 つけもの」として栃木県に運ばれている大根やかぶについて情報提供をする。最後 に、今日の授業でわかったことや感想を書く。
(4) 授業後の児童の感想
- かんぴょうのもととなる「ゆうがおの実」をむいて、ビニールハウスにほして同じ長さに切って食べるということがわかりました。それから、京つけものとせんまいづけがとちぎけんにいっていることがわかりました。みんな食べたのかなあ。
- かんぴょうは、大根からできていると思っていたけど、ゆうがおだとわかった。とちぎにもつけものがいっていた。かんぴょうの作り方も教えてもらった。いろいろなことがわかってよかった。
(5) 授業についての評価
身近な教材を取り上げ、生の情報を伝えたり、他地域の情報を知ることで、テレビ会議は有効であった。また、テレビ会議で直接教えてもらうことにより驚きや感動を持って授業に臨め、理解を深めるのにも役立った。授業の中で意図的にじっくり考えさせる場面を作り、その考えを表現させていく ことが必要である。自分なりの考えを持たせる一つの支援として、今後、テレビ会議を利用していけるのではないか。
3 具体的実践例(中学校)
(1) 学年、教科等 2・3年、学校裁量(総合学習) 「ホームページによる情報発信」
(2) 指導目標
- 自ら課題をもって学習に取り組む力の育成 ・資料や情報機器を使っての情報収集能力の育成
- 得られた情報を考察したり加工したりする能力の育成 ・自分の学んだことを表現する力の育成
(3) 指導の経過
@意義の説明とテーマ決定
最初に総合学習に取り組む意義や取組方、テーマ設定について指導した。 この指導では、テーマ設定もグループ編成も全く生徒の自由とした。これは、学習の目標の一つである、「自ら課題をもって学習に取り組む力の育成」を意識したものであり、生徒自身の試行錯誤と集団の中での相互評価によって、本当に値打ちのあるテーマに近づかせることが出来るのではないかと考えた。
(設定したテーマ) 和知町案内、和知町の問題、和知町の文化 長老苑(特別養護老人ホーム)のことについて 中学校のクラブ、全国の中学校への質問、いろいろな学校の体育祭の情報 ニュージーランドの学校との交流 AIDSについて、クローン羊について、熱帯魚について 高等学校案内、高校情報、 ギリシャについて、ローマについて、星座にまつわる神話調べ 等
AHTML言語の基本の指導
テーマ設定と同時に、ホームページ作成のHTML言語の指導を行った。 当初は文字とイメージを表示できる程度を目標に考えていたが、実際に指導してみると、意欲的な生徒は表やリンク、マップなど意欲的に取り組んだ。
B学習の方法
調査の方法についてもグループによって様々であった。図書室の本で調べる、直接施設に出かけて行って話を聞く、パンフレットをもらってきたり卒業生に高校の様子を聞いてきた生徒もあった。また、WWWからの情報収集も行ったが、インターネットに接続したコンピュータが1台だけのため、常に順番待ちの列が出来る状態であった。
Cホームページの作成
得られた資料をもとにホームページにまとめる作業は、限られた時間の中でなかなか作業がはかどらないという面があったが、時間をかけて絵を描く生徒やHTMLの技術面に関心を持っていろいろ試みる生徒、内容面を追求しようとする生徒など、生徒の個性が発揮できる取組となった。
D中間発表会・作品発表会
相互評価によって各自の取組の方向性を見直させることを目的に中間発表会を実施した。制作中のホームページを互いに見合うことによって「インターネット上で公開する価値のある内容、公表すべきでない内容」など情報の質やモラルについて生徒に考えさせる機会となった。
Eホームページでの公開
本校のホームページに「総合学習のページ」を設け公開した。生徒たちにとって、自分たちの作品がホームページ上で全世界に公開されるということは、学習への大きな動機付けとなったよう。
(3)明らかになった課題
自由なテーマ設定にはメリットも多かったが、十分深められなかった生徒もあった。テーマの設定について教師自身の見通しを持った指導が必要であるとともに、生徒の興味関心を目的に添った内容に高めるためのきめ細かい指導が必要である。 本校のホームページは平成9年5月30日公表以来、一日平均10回のアクセスがあり、10月21日にはのべ1000回を越えました。しかし、一方的に情報を送れば容易に反響が期待できるというものではなく、ましてや個人でインターネットにアクセスしたり発信したりできる中学生はまだまだ少数であろうと思われる。従って、発信した情報に対する反応を次の学習に取り込むことにはまだ課題も多い。
W 研究上の問題点と今後の研究計画
1 各教科等におけるネットワーク活用
各教科等での活用については、多くの教科で実践が進められつつある。全体計画の中での情報教育(ネットワーク活用)の位置付けや授業改善の視点からの活用方法の研究が今後更に必要である。
2 学校間ネットワークを活用した交流や連携
テレビ会議システムを活用しての交流については、行事になりがちであり、授業として深めていくための研究が必要である。
3 学校の情報発信の在り方
学校の情報発信にあたっては、個人情報の取り扱いや著作権、肖像権等に関する研究がさらに必要である。
4 ネットワーク管理運営体制
継続的にネットワーク管理やホームページの作成・更新が行えるような校内体制づくりと校内研修の充実が必要である。