「みえますか?子どものサイン」の活用について
 
1 研究のねらい
 少年による一連の殺人事件が相次ぎ、「うちの子は引きこもりだが大丈夫だろうか」「子どもの行 動が気になるが、どのように接してよいかわからない」という保護者からの不安や悩みが京都府総合教育センターに寄せられました。教師からも、子どものサインをいち早く察知し、子どもの状況をどのように捉え、どう対応するかについて、教育活動に直接役に立つ情報を提供してほしいという要望も多くありました。
 そこで、これまでにセンターが子どもや保護者、教師への教育相談を通して蓄積してきた様々な教訓や経験を整理して、平成15年9月から「みえますか?子どものサイン」というサイトをセンターのHP(http://www.kyoto-be.ne.jp/ed-center)に開設してきました。
 本コンテンツを作成し、その活用を促進するためにインターネット上で公開した目的は以下の4つです。
(1) 子育てや教育活動に実際的直接的に役立つ情報を、いつでもどこからでもアクセスして気軽に得ることができる。
(2) 保護者や教師が来所相談や電話相談を受ける前に読み、教育相談(カウンセリング)について事前に予備知識を得ることができる。
(3) 校内研修会等での活用を含め、教師の日常の指導場面に具体的に役立てることができる。
(4) 学校と保護者、一般府民が、地域社会において子どもの見方、子どもの行動のとらえ方に一定の共通認識をもつことによって、同じ「土俵」の上で子どもの状況について話し合ったり考えたりすることができる。
 
2 みえますか?子どものサイン」の研究内容
(1) コンテンツの内容
  『気になる子』を「反抗する」「虐待が疑われる」「背のびしているよい子」「キレる」「登校できない」「興奮しやすい」「忘れ物が多い」「落ち着きがない」「暴力をふるう」及び「教科学習に特異な困難を示す」という10の態様別に考察し、それぞれの状態像の理解の仕方や対応の在り方について示しました。
 目に見える子どもの状態や行動からカテゴリー化し、態様別に掲載することによってどこから読んでもすぐに役立てられるようにしています。カウンセリングの場面という限定された場でなく、家庭や学校で日常的に行うことが可能な子どもへの関わりや接し方について、専門家向けでなく、誰にもわかる平易な言葉で記述しました。
 
(2) HP掲載上の留意事項
 ○相談事例の特徴等について記述する際には、内容を損なわない程度に事例を改変して、個人が決して特定されることがないよう、プライバシーの保護に十分に配慮しています。
 ○考えをゆっくりと、じっくりと深められるようにビジュアルな図や表に頼らず、文章で詳細に記述しています。
 ○子どもの「こころ」を理解するためのマニュアルは、そう簡単に作成できるものではありませんが、できる限り理解の仕方や対応の在り方についてガイダンス的に、読みやすい記述にしています。
 
3 研究の成果と今後の課題
(1) 成果
 ○校内の教育相談の実践に活用
 担任教師や養護教諭が不登校の子どもの自宅へ訪問する際に留意すべきことについて、登校できない子どもへの家庭訪問の仕方についてのサイトを利用するなど、学校で行う教育相談実践の一助となりました。
 ○校内研修会等での活用
 児童が虐待を受けたと思われる場合、虐待の被害が間接的な場合等に対して、学校における早期発見と支援の手立てを学ぶ研修会の資料としても活用されてきました。
(2) 課題
 ○コンテンツの内容の改善
 HPを閲覧した方からの感想や要望に応える形で双方向的に、読みやすい、わかりやすい充実したサイトに漸次、改善していくこと。また、時代の変化に即応し、状況や課題にあったものとして内容の拡充を図っていくこと。
 ○活用例を情報発信
 理解の仕方と対応の在り方だけでなく、情報提供者の了解を得て、学校や家庭でどのように活用されたかという活用の実際例を発信することによって、より双方向性をもたせること。
 
 
※アクセス数累計は約32,000件(平成18年3月現在)
 開設(平成15年9月5日)と同時に、各新聞社(京都、朝日、毎日、産経など)が「子どものサイン見逃すなHPでアドバイス」「SOSに気付いて」等の見出しで報道されました。
 また、その後も日刊行政ジャーナル(共同通信社)、KBS京都のラジオインタビューなどメディアでコンテンツの内容が報じられたこともあり、公開から1ヶ月でアクセス数は6,000件を超え、掲載内容についての府民の関心の高さが窺えました。
 
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