(2) 「キレる子」への関わり
 
 ア こころを支えるということ
 「心配いりませんよ、○○君は必ずやってくれますよ」とか「お母さん、それは過保護ですよ、もっと子どもに任せてはどうですか」などと親の子育てについて指摘したり、励ましたりすることは、余計に親を動揺させたり、結果的に子育ての不安の中に追い込むだけであることが多いと思われます。

 子どもに任せられないから親は心配しているのであり、誰かに過保護であると子育てのまずさを指摘されて過保護をやめてしまった親など、これまで出会ったことがありません。しかも子どもが必ずやってくれると断言できるほど、子どものことが理解できることなどまずあり得ません。

 親にアドバイスや助言が有効であることは実に稀です。


 また、キレる子どもに対して「それほど細かいことを気にするなよ、もっと気持ちを大きくもてよ」とか「まあまあ、そんなこともこれからよくあるんだから、それにも耐えていかないとなあ、心にゆとりをもって生きていくことが大事だよ」といったアドバイスは、時には子どもの気持ちをホッとさせたり、その一言で心をリラックスさせる場合もあるかもしれません。

 しかしながら、いつもいつもこのアドバイスがうまくいくとは限りませんし、親や教師にとっては「細かいこと」「よくあること」で「がんばれば何とかなる」であっても、当の本人にとっては決してそうではないことの方が普通です。

すでに傷ついてしまっている子どもにとっては、そのようなアドバイスがかえって傷を深めたり拡げてしまうこともあります。

 「私は細かいことを気にしすぎてキレてしまったり、クヨクヨする性格なんだ」「みんなだってこれくらい耐えているはずなのに、ぼくには耐えられない、やっぱりぼくはダメ・・・」というようにさらに自分をネガティブにとらえてしまうこともあるでしょう。


 8年前、阪神淡路大震災の直後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が注目を集めました。

 両親を一瞬のうちに亡くしてしまった子どもたちや、住居を失い仮設住宅での慣れない生活を余儀なく強いられた子どもたちに「がんばれ神戸」のスローガンのもと、多くの励ましのメッセージが届きました。このとき、深くこころに傷を負った子どもたちは全国から寄せられた「がんばれ」のメッセージによって、きっとたくさんの元気や勇気をもらったことでしょう。

 しかし、子どもたちの中には「これだけがんばっているのに、これ以上、どんなふうにがんばれというのか」と、かえって辛い思いをしたということもあったのではないかと思われます。


 傷ついたこころに励ましやアドバイスは、さらに傷つけ、追い込むこともあるということを知っておくことは大事だと思います。
 
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