虐待が疑わしい場合に、外傷の原因について
問うと、親はそれを否定したり、不慮の怪我であるとか、この程度くらいは厳しくしつけないとダメだなどと開き直ることがあります。
親が虐待を行う背景には様々な要因があり、またその虐待の仕方も個々の親の生育歴や生活スタイルによって様々です。
しかも虐待されている子どもがその事実を積極的に語ることはまずなく、マスクをかぶったようにニコニコしているようなことが見られることもあります。従って、援助する側が、虐待を発見する鋭敏な感覚をもつことが極めて重要です(Fig.6)。
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Fig.6 「発見のポイント」 |
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@表情・態度
子どもの表情や態度は虐待の発見の最も大きなポイントです。
虐待者に強い恐怖感をもっている場合は、それが身体症状となって現れることが多くあります。
面接室で子どもが親と同席すると、極端に萎縮した感じがする、常に親の存在を気にして落ち着かない、視線が定まらない、あるいは極めて無表情で無気力な感じがするなどの様子がうかがえます。
一般に、抑圧と恐怖・不安が強いほど、言葉では表現されにくく、表情や態度となって現れやすいものです。
子どもとの確かな信頼関係ができる前に、強引に言葉で引き出そうとすると、かえって子どもを追い込んでしまい事実を語ることができず、発見が遅れてしまう場合もあります。
A外傷
身体に受けた外傷は目に見えやすい虐待の兆候です。
外傷は、目につきやすい場所よりも衣服で見えないところなど、発見しにくい場所にあることの方が多いようです。
手足や背中などに不自然な外傷があったり、また複数箇所にアザがあったり、アザが同じところに繰り返しできているような気配がある場合などには、まず虐待の有無を確かめることが必要です。
親を責めるように事実を問うのでなく、外傷のできた原因に対する親と子の説明を双方からゆっくりとした感じで聴くということが大事です。
その説明の仕方が不自然であったり、子どもが黙り込んでしまうような場合、あるいは医療機関を含め学校外部の援助機関に対して拒否的で虐待が疑わしいような場合には、早急に教育相談機関に連絡し対処の方法を相談することが必要でしょう。
B生活の状況
子どもの生活状況から、虐待が発見されることも多くあります。
髪の毛が汚れている、衣服が不潔である、毎日同じ物を着ている、理由の曖昧な欠席が多いなどが虐待の兆侯である場合もあります。
親の生活態度や子育てへの関心の高さも一つの目安になります。
例えば、親自身が極めて不規則な生活をしている、アルコールに依存的な生活をしている、暴力的な夫婦関係、兄弟関係がある、不登校や問題行動に対して無関心である場合などには注意深く子どもの生活状況を観察する必要があります。