情報処理に関する科目の分科会発表(報告)

報告 北野康子(府立商業)

 分科会は情報処理に関する分科会に参加させていただきました。情報処理分科会では下記の4本の報告がありました。

1. 経営情報システム「マーキュリー」を取り入れた経営管理的能力の育成 長野県商業教育研究会
2. 情報処理関連科目における指導内容・方向について インターネットの効果的な活用法 富山県立高岡商業高等学校
3. 高度情報通信社会における情報教育 名古屋市立若宮商業高等学校
4. 初級シスアド受験への取組を通して 下関商業高等学校

1.経営情報システム「Mercury」を取り入れた経営管理 的能力の育成

   長野県商業教育研究会

○情報処理教育における経営管理的能力の育成
 長野県では情報処理関連科目の中心的な視点として、「経営情報を分析、活用する能力」の育成を掲げる。経営に関する情報の収集・加工、意思決定ができる能力を育成するための学習の場、教材をコンピュータを活用したビジネスシミュレーションゲームの形態をとることで提供する。損益分岐分析を中心に経営数値結果を表やグラフから読み取り、問題点の発見・解決の意思決定を科学的に行う態度の育成をめざし、マネージメントゲームから出発、戦略会計を取り入れた経営情報教育システム「Mercury」を開発。総合教育センターにて教員研修、生徒実習に活用。
     
○戦略会計(STRAC)について
 費用を固定費と変動費(売上原価のみ)に分割した図解損益計算書を利用。固定費の粗利益に対する割合から損益分岐分析をする。売上数量や単価、原価、固定費の増減などの意思決定をさせ、シミュレーションを繰り返す。

○ システムの活用について
 生徒4名で1社を結成、1社につき2台のパソコンを使い、オンライン上でゲーム的に企業間競争を。資金計画や販売員数、広告予算、目標利益、販売単価、数量、仕入数量等を決定し、シミュレーション実施。代金決済や財務諸表の作成は自動処理される。
 センターでの実習は1日(9:00〜16:00)で完結。ただし各校で事前学習3時間程度、事後学習3〜5時間程度を想定。事前学習用テキストおよびマニュアルをオーサリングソフトにて作成、シミュレーション機能の演習用に表計算ソフトを利用。事後学習では、マクロ化された表計算やデータベースソフトに必要な各自のデータを入力、グラフ化された結果から問題点、改善策等の検討を行う。

 


2.情報処理関連科目における指導内容・方向について(インターネットの効果的な活用法)

富山県立高岡商業高等学校

○ 国際交流における活用
文部省マルチメディア国際交流推進研究指定校。校内に情報ネットワーク利用開発委員会(商業、英語、理科、社会の教員で構成)を設置し、国際交流への活用を検討。
・ 北アイルランドとのE−mail交換プロジェクト
  E−mailの他、ホームページ上での意見交流、紹介ビデ オによる交流等。
・韓国修学旅行の事前学習としての交流
 韓国の高校生とE−mailの他、ホームページ上でと学校 生活や生活習慣の違いについて意見交流やCu−Seeme による交流、韓国関連の他のホームページより情報収集、調 査研究を行い、文化祭の発表や社会科授業として活用。交流 においては、国際経済科を中心に英語で実施、双方の生徒と も母国語ではないという点で、会話上のギャップはそれほど 問題にならない。現地での交流に先立ってインターネット上 で交流を深めたことが、海外研修の成果を大きくした。
 
○情報処理関連科目における活用
・情報処理での事例
  ホームページで公開されている統計資料、企業の決算データ 等の各種データをダウンロード(あらかじめサーバーに取り こむ)、表計算ソフトにより加工、グラフ化し、要点をまと めてレポートとする。
・経営情報、情報管理での事例
  科目連携による共同授業で、ホームページを活用して国内外 の物価アンケート調査を実施、回答を表計算ソフトで加工し 結果をホームページで公開。情報収集と国際交流を実現した 形となる。その他、データベースに関する学習として、ホー ムページ上に検索画面を設定、VBにより検索プログラムを 実行、SQR言語による抽出を実施。
・総合実践での事例
  ホームページ上に仮想店舗を開設、他県の高校と地元特産物 を中心として電子取引を実施。マルチメディアによる自己紹介や地域紹介、観光案内 なども。

 


3. 高度情報通信社会における情報教育

名古屋市立若宮商業高等学校

○ホームページによる学校紹介
 伝統的に商業デザインに力を入れてきたこともあり「生徒自身の手による」「デザイン的に優れた」ホームページをコンセプトに、部活動として取組を開始。入学式や修学旅行などの学校行事や部活動の様子だけでなく、初任者教員の研究授業や初任者研修の様子も取り上げている。
 
○ 授業での導入
・1年「情報処理」で「インターネット」を単元として扱う。
・3年生商業科の「マーケティング」で市場調査に活用、調査結 果から新商品(仮想)を考案。インターネット上に"バーチャ ルモール"を開設、一般からの投票による売上ランキング作成 ・3年商業科の「課題研究」で、バーチャルモール用のPOPを
 作成。「課題研究」でインターネットによる簿記講座、税務会 計講座を開設
・3年情報処理科の「課題研究」でホームページ作成を実施、NT Tのホームページコンテストに参加、大賞を受賞。
 
○国際交流への活用
・米国AT&T主催の「バーチャルクラスルームコンテスト」
  3年商業科の課題研究で参加。自校アピールとアイデアを掲示 板に提示、パートナーを募集、3カ国共同で一つのホームページ を作成するプランで、商業高校である韓国のソウル女子高校と米 国のガーディナ高校との共同制作。生徒の英語に対する苦手意識 を克服させる努力が必要だが、積極性、国際理解、英語力の習得 が成果。

(※同様に、韓国をはじめ、その他複数の国とのインターネット交流を実施している高校として、名古屋市立西陵商業が「国際理解」という科目での実践報告をしています)

・Cu−SeeMeによる国際交流(米国Palo−Alto高 校)部活動による取組。生の英語による"生きた授業"で、コミ ュニケーション能力の育成、異文化理解に効果が大。
・海外研修支援ホームページ
 「名古屋市立商業科・工業科高校生海外研修派遣団」事業のホ ームページ開設。国際理解の一環として広報、支援活動を実施。
  

○地域連携への活用
・開放講座への導入
生涯学習の一環として市民開放講座を開設、インターネット の講習会を実施、PTA研修講座などでも実施。
・地域とのネットワークづくりへ(将来展望)
  完全週休2日制へ向けて、家庭、地域と学校の情報交換を目的 とするネットワークを構想中。就職情報、進学情報、学校だよ り、PTA通信、学級通信、地域案内などの他、意見交換、通 信授業、中学生のインターネットによる体験入学なども。


4. 初級シスアド受験への取組を通して 

山口県立下関商業高等学校

○ 基礎・基本を教える授業
クラス全員が合格できる目標に向けて取り組むことを基本に、放課後補習などはせず、授業時間内だけで指導する方針。1年で情報
処理1級、2年で利用技術2級、3年で初級シスアドを目標。(明言は避けられましたが、複数科目にわたって時間を利用していると推測されます)
情報処理科だからこれを、という固定概念ではなく、多くの分野 将来役に立つ分野の基礎、基本を学ばせる。特定の教員だけしか指導できない内容では、生徒にとっても同じであると考える。こ れらのことから、二種ではなく、シスアドを目標にした。
 シスアドの指導として、ヤル気を持続させることが大切。


 

 以上が情報処理関連科目での発表概略です。(最後のシスアドの指導方法などの詳細には触れられていませんでした。)
 なお、この他の分科会発表については、項目のみ挙げさせていただきます。

・ 生徒発表を取り入れた「流通経済」の指導について(岩手県立釜石商業)
・ 新しい学力観に基づく流通経済の指導(山形県立北村山高校)
・ 日商2級小売商(販売士)検定指導法(栃木県立宇都宮商業)
・ マーケティングにおけるインターネット広告に関する指導(東京都立芝商業)
・「地域経済」と「流通活動」に関する教材と指導(茨城県立山方商業)
・ 財務諸表分析の指導と教育簿記への危惧(北海道小樽商業)
・ 資格取得を目指した簿記会計科目群の指導のあり方(北海道室蘭商業)
・ 簿記指導におけるスペシャリストの育成について(千葉県立東金商業)
・ 日本一の経理科クラスを目指して(岐阜県立岐阜商業)
・ LANシステム導入による魅力ある「総合実践」(静岡県立袋井商業)
・ POSシステムの利用(愛知県立東海商業)
・ インターネットを使った実践授業(名古屋市立西陵商業)
・ 商業科の特性を生かしたボランティア活動(岡山県立岡山東商業)
・ 地域・産業界との効果的な連携・協力のあり方(山口県立萩商業)
・ 商業系部活動の活性化に必要なもの(山口県立徳山商業)
・ 魅力ある海外研修旅行にするために(京都市立西京商業)
・ 体験学習「熊商デパート」をとおして学ぶもの(熊本県立熊本商業)