全体会研究発表「生きる力を育む教育課程の展開」(報告)

報告 北野康子(府立商業)

全商大会の全体会では下記の発表が3本ありました。その概要を報告します。

1. ラオス交流株式会社…設立の経過と到達点 高知市立高知商業高等学校
2. 個性を生かす英語実務の展開について 茨城県立竜ヶ崎第二・取手第一高等学校
3. 生きる力を育む教育課程…類型制導入による教育改革 長野県立松代高等学校

1.ラオス交流株式会社 設立の経過と到達点

                高知市立高知商業高等学校

○ 設立経過
文化祭の取組としてのボランティア活動を株式会社形態の販売実習に結び付けたもの。生徒会を中心とする生徒主体の企画で発展してきたという点で、いわゆる授業としての学校間の国際交流や各地の商業高校が販売学習として行うデパート運営とは異なる。

○ 内容
 生徒会を中心に株式会社を組織し、1株500円で2000株の株式を発行、調達した資金でラオスの民芸品などを仕入れ、文化祭で販売、その利益をラオスの小学校設立資金(12万円で1校が建設できる)として寄付をするというもの。
 仕入は夏期休業中に実際に生徒代表を現地に派遣、各地の生産工場などで買い付けを行う。日程は9日間で、県庁訪問や寄付によって設立された小学校の見学や現地調査なども含めている。旅費については約20万円近くで原則、個人負担ただし、半額補助とし、県や市の推進事業の指定による援助も活用している。
 取り組みのきっかけは、新聞記事に高知県のラオス支援団体の取り組みが紹介されたことで、平成6年から交流を開始、単なる寄付に終わらせないための工夫、また、商業高校らしい工夫として、平成8年より株式会社を設立、その他、社会の授業で関連学習もされている。次年度はモンゴルとの交流も予定。


2.個性を生かす英語実務の展開について

                茨城県立竜ヶ崎第二高等学校
                茨城県立取手第一高等学校

○ 県単位での取組
 茨城県では、高等学校教育研究会の商業の研究会部門として英語実務研究委員会を設置、県独自のテキストを作成。県教育委員会でも、全商主催の実用英語セミナーに県費で毎年10名を派遣するなど、商業科教員による英語実務の指導に力を入れている。

○ 独自テキスト作成
 商業科生徒を対象とするため、わかりやすさを第一とし、「使える」会話として、食事・日本文化・電話・病気・県内各地の交通、観光紹介など、身近な内容、基本的な会話で構成。ただし、表現の確認は英語科教員やAETの協力を必要とした。進め方については、会話テープの反復、ペアでの会話練習や発表を重視、質問の聞き取り、確認事項はシート記入するなど。テープもテキストも商業科教員のオリジナルのため、生徒の反応もよく、さらに今後はゲームやパズルなどの教材、未経験の先生のための手引書などを検討。しかし、英語科のOCAとの線引きはできていない。(対象校はOCB)

○ その他の実践例
 修学旅行先の広島で外国人に話し掛け、原爆や平和に関するメッセージを書いてもらうという課題を実施。ただし、生徒自身ですべて説明することは困難なため、あらかじめ教師が作成したメッセージを用意し、それを読んでもらえるようにコミュニケーションをとることをメインとする。ただし、事前学習としての会話練習は想定問答として暗唱させている。実践結果として得られたメッセージは今後の学習に活用。
 なお、これらの資料は各校ホームページでダウンロード可能。

         取手第一高校     http://www.net-ibaraki.ne.jp/kou-071/
         竜ヶ崎第二高校    http://www.net-ibaraki.ne.jp/kou-067/


3.生きる力を育む教育課程

                   長野県立松代高等学校 

○ 商業科類型制度導入について
 平成6年度より、商業科を会計類型、情報類型、流通経済類型、国際経済類型の4類型とし、生徒の希望優先で開設。類型変更は2年進級時点で許可、ただし、1年時より上級内容の学習を要する類型への変更は事実上不可能。

○ 体験学習制度について
・類型別企業見学(1年生)
 産業教育振興会より、類型に適した事業所の見学・講演など
・「スペシャリストへの道」体験学習制度(流通2年生全員)
 長野県教育委員会による事業(すでに県内24校が実施)を利用、15ヶ所程度の企業で体験学習。日程は2日間、各事業所ごとでカリキュラムを設定、日毎に事業所担当者による評価を。
・広告制作体験(流通1〜2年生)
 地元商店団体発行の広告紙「松代かわら版」の制作に参加、年1回、各商店の広告代理店として実習。その他、長野五輪関連で町のシンボルマーク・記念品を制作し、商工会議所の観光事業としてお土産の包装シールに利用。
・ 総合実践システム「マーキュリー」(2年生)
総合教育センターでの実習(県内各校が利用)。3年の総合実践に備えての事前学習として実施。
・ 外部講師、インターネット活用(国際1,2年)
スチュワーデスや外国語学校講師により、国際マナー等の講演。特に英語劇「セイフティープログラム」は好評。海外での日本人が陥る危険についての啓発として外務省が取り上げたもの。現在は、公演ビデオとして東京商科学院専門学校が貸出を実施。
 インターネットは個人輸入の実施や海外高校生とのE−mail交流の実施に活用。
 
※会計類型、情報類型は府商とほぼ同様の内容のため、割愛しましたのでご了承ください