救急・救命講習用作品「いのちのバトン」について

 この作品は、福井市で体育祭の最中に心室細動で倒れて亡くなった川崎沙織さんを題材としたものだ。

 平成18年に東稜高校放送部が、足かけ2年に渡ってラジオ・テレビで作品化し、2年とも全国大会に出場し、準決勝まで進出した。そのときから反響は大きく、消防や各方面から講習で使用したいという依頼があったが、著作権の関係で実現しなかった。講習用の再編集を約束したまま、顧問の髙山は洛東高校に転勤になった。

 洛東高校放送部は、立ち上げの時から東稜高校放送部に発声の指導や機材の使用などで助けてもらっていて、東稜の部員数が減少していく中で、「いのちのバトン」の再編集は自然な形で洛東高校に引き継がれていった。

 平成23年秋、作品が完成した。作品は朝日新聞を初め、毎日新聞、京都新聞で大きく紹介され、NHKラジオ第一放送でも紹介された。反響は大きく、北海道を初め、全国の消防・教育の各方面から依頼や問い合わせをもらっている。

 高校の放送部の活動のあり方として、単に放送コンテストで上位をめざすだけではなく、こういう形で役割を果たしていくのも、放送部のあるべき姿であるように思える。ちょうど作品の制作中に、サッカーJFL松本山雅の松田直樹選手が心筋梗塞で倒れた報道が入った。そのときのTVのレポーターが使ったコメント、「もし、グランドにAEDがあったら」という表現は、6年前に、すでに東稜の生徒がナレーションの中で使っている。放送局のプロたちは高校生の問題意識に6年以上遅れている。……高校生がプロを越えた瞬間である。

 「いのちのバトン」は、そのタイトルのとおり、2校の生徒に、3代に渡って受け継がれている。初めて取材に行った、東稜高校のOG、小島瑤子はこう言っている。「作品の中で、沙織さんのお母さんが言われたように、『見知らぬ誰かのためにAEDを押せる』社会は、いじめもない社会です。その日のために、がんばります」

 この作品は本校放送部と、NPO法人「命のバトン」社で頒布している。(因みに、この作品に関する経費はすべて、クラブ予算とは全く別に、部員たちの小遣いと東稜高校放送部OB・OGのカンパだけでまかなっている。)



 
 
 
 

制作したDVD。講習に使いやすいように、5分ジャストの時間で仕上げました。

 

制作した放送部員たち。背景は、福井市の川崎沙織さん。

 




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