普通学科における教育法
  点字が導入される以前は、文字をいかにして子どもたちに獲得させるかが課題となりました。古河がまず着想したのは、凸字・凹字の触読や、手のひらや背中に書かれた文字の認知から書字に導く方法でした。古河は、深い洞察力で盲児や聾児を観察し、子どもたちが必要とするものは何かを考え、独創的な工夫を凝らして、つぎつぎと教育方法や教材・教具を作っていきました。
   今日の「自立活動」といわれる分野まで開発、洗練に工夫の限りを尽くしました。

 

4  「木刻凸字」(もっこくとつじ)


   木刻凸字は捫字(もんじ)や活字ともよばれ、桂の材でつくられ、凸字と凹字を触読させるものです。
   草行体の漢字部首のことを「七十二例法」とよび、古河は、盲児の漢字指導には真体は不適当だと考えました。

 

5 「蝋盤(ろうばん)文字」


   蝋盤文字は、熱で溶かした蝋が固まる前に、凹字をへらで彫らせたり、固まった凹字を触読させるものです。
   いちど学習したあとも、熱で溶かせば再度使用できる蝋の性質を生かした教材です。

 

6 「盲生背書之図」(額)


   手のひらや背中に先生が指で文字を書いて指導している様子が描かれています。画数の多い漢字は背書法が利用されたようです。

 

7 「自書自感器」


  厚紙の上に紙をのせ、鉄筆のようなもので筆記する道具です。自書自感して正誤を確かめられます。罫を張った枠をはめるようになっており、罫の粗密によって字の大きさが選べます。今日の「レーズライター」の原型とでもいうべきものです。

 

8 「算木」


  横の短いすじは「1」、たての長いすじは「5」を表します。この2本の算木で「0」から「9」までの数が表せ、この算木を並べることで加減乗除ができ、かなりの計算が可能です。ただ、算木は盲教育が始まる以前(江戸時代)から一般に使われていたといわれています。

 

9 「半顆算盤」(はんだまそろばん)


  「半顆算盤」は算盤の底を上げ、玉の下半分を平らにして回転を防ぎ、盲児に使いやすくしたもので、今でも使える実用性に優れたものです。

 

  10 「こはぜ算盤」


  「こはぜ算盤」は現在も授業で使用されています。「こはぜ」とは、足袋のかかと部分をとめ合わせる爪の形をしたものをいいます。

 

11  「さいころ算盤」


  数字や演算記号が符号化されており、その符号がコマに真鍮の鋲や針金で打ち込まれています。「籌(ちゅう)算盤」とよばれる升目の盤にコマをはめ込んで四則から平方根の計算まで可能です。

 

12  「 凸形京町図」


  明治15年の「学事年報」の器械模型欄には約200種の教具が記載されています。先の教具とともにこの「凸形京町図」もそのひとつで、西京村の柘植利安の彫刻で、13円50銭と記されています。

 

13  「凸形地球儀」


  『盲唖教授課業表』(教育課程表)によると、「日本地誌」のほか「万国地誌」が設けられており、この地球儀が授業で使われたと思われます。明治12年購入。

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