「平成10・11年度文部省指定人権教育研究」を振り返って

キーワード

 人権感覚をみがくためにどのような方法がよいか、が今回の研究の出発点であった。今まで行っていた
特設の同和問題学習では、ともすればその時間だけの取組になりがちで、日常的に定着しにくい場合も多
かった。また、使用する教材にしても、生徒の身の回りに常にあるものを用いていたわけではなかった。
さらに、卒業してからも人権問題について考える適切な方法を充分に示せていたわけでもなかった。この
ような観点から振り返って、3つのキーワード「日常・身近・継続」にたどり着いた。

新聞を利用した人権学習

 今回の取組「新聞を利用した人権教育」はこのような観点から、3つのキーワードを生かせるように考
えた。新聞を利用したのは、教材が身近にあるということ、また、毎日、新聞を見るという日常的なこと
から自分で教材を探せるということ、卒業してからも、新聞を見たときに今回取り組んだ人権の視点から
記事を見ることができる、将来に継続して取り組めるということ、この3点を満たしていたからである。
 具体的な内容としては、「新聞記事の中から人権に関するものを選んで切り抜き、台紙に貼付し、そこ
に自分の意見や感想などを記入し提出する。受け取った教師は、切り抜かれた記事と生徒の書いた意見・
感想を読み、コメントを記入して生徒に返す。」という流れで、一つの新聞記事の内容を元に、生徒と教
師の間で率直な意見交換をおこなった。生徒の人権感覚をみがいていくだけでなく、教師にとっても新し
い発見が期待でき、さらに教師自身の人権感覚をもみがくことができた。

取組を通じて得られたこと

 今回の取組の中で、日常・身近・継続をキーワードにしたが、その中でとりわけ「日常」という部分に
重点を置いた。「人権」というと、非日常的な感覚で捉えてしまいがちな生徒が多いので、いかにして日
常的なものとして感覚的に捉えていけるかを、感性に訴えかけながら学ぶことに重点を置いた。「新聞」
という題材を使用したのも、それが非常に日常的なものであり、この取組から「人権」について考える
(意識する)ことが少しでも日常的になることを目標としていたからである。
 本校生にとって、同和問題は非常に身近な問題であるが、それを「非日常」として捉えてきた生徒が多
かった。今回の取組では、直接同和問題を扱った記事を選んだ生徒は少なかったが、様々な人権に関する
記事を選び、考えることにより、「人権」というものを日常的に意識することができるようになった。そ
して、そのことが今まであまり意識していなかった同和問題を、日常的に関わりのある問題であると、意
識させることにつながったと考える。
 人権教育推進会議・教職員研修などを通じて、各分掌・教科が人権教育という視点に立って教育活動の
見直しを行った。その中で、人権教育を特別なものとするのではなく、「人権」は様々な活動の中に含ま
れているものであり、指導する側が人権の視点をもつことにより、その活動の中の「人権」がクローズア
ップされることが再確認された。我々教職員にとっても、「日常」という視点の重要性を再度確認する結
果となった。

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