▼教育相談シリーズ 不登校B 「不登校への対応」(最終回)
不登校の子どもへの家庭訪問 〜親の「こころ」に会いに行く〜
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教師から寄せられる相談には、「親が子どもに過干渉で、口うるさく言い過ぎ。」「子どものことを放ったらかしで親は自分のことしか考えていない。」「親が自分のイライラを子どもにぶつけるから・・・。」など、不登校の子どもの親の養育態度や家庭生活の在り方に対する非難や不満が含まれることがあります。
今回は不登校の子どもへの家庭訪問での、親との面談について考えてみましょう。周りからみていると、親がもっとこうしてあげた方がいいとか、こんなことも親ならできるのにと思えることがあります。懸命に教師が取り組んでいればいるほど、「子どものためにこれだけ自分がやっているのに・・・」と親に対する不満があって当然と言えるでしょう。
「○○のようにしてあげてください」「もっと△△というふうにしていきましょう」と親に学校の方針を伝えたり、アドバイスしながら一緒にやっていけるうちは、それが子どもの成長に役立ち、学校復帰に向けて効果的に働いているのかもしれません。けれども、いつまでもアドバイスのとおりに親の養育態度や家庭生活の在り方が変化し続けることはありません。もし親ができそうにないアドバイスを一方的に続けたとすると、多くの場合、親は「先生はちっともわかってくれていない」と不満を感じるようになります。そうなると互いに不信感が高まり、親にも教師にも家庭訪問の場がストレスを生む要因となってしまいます。
親に対する非難や不満などの感情が自分の中に起こってきたり、何かアドバイスがしたくなるとすれば、それはおそらく子どもの側に立って親の話を聞いているか、自分の教育観や人生観と照らして親の話を聞いているからでしょう。親と会うときには、親の側から「家庭訪問」を眺めてみることが大事です。親は自分の言葉をどのように受け止めたのだろうか、この面談が親自身のためになったのだろうか・・・と、親の側から眺めるのです。
たいてい、親がどのように感じていて、これからどのようにしたいと思っているかなどということは、こちらにはわからないので、だからこそ親の言葉を「聴く」ということが必要になるのです。
親に会いに行くときに、最も大事なことは「親、その人自身と会う」ということです。子どもとの関わりに悩みをもっている「親のこころ」に会いにいくということが必要です。その悩みはすぐには口にしないことかもしれないし、できないのかもしれませんが、何度か足を運んで親の語りにじっくりと耳を傾けていると、親自身のことがじわじわと伝わってくるものです。
子どもが登校したくても登校できないとなると、それは親の養育に間違いや足りなさがあったのだろうと周囲の人から見られ、親自身もとても辛く苦しいものです。そのため、時には登校できない原因を教師のせいだと責めたてたり、友達のせいにしたりというように他者に向けられることも起こってきます。
確かに周りの関わりに明らかな非があるなど、時には原因が他者にあることもありますが、多くの場合、そのようにして責任を転嫁しないと親自身が安定を得られないことが多いからです。
仮に子どもへの関わり方が多少ずれていたり間違っていたとしても、不満や辛さ、苦しさでいっぱいの「親のこころ」に添い続けていくと、親としてその時々に子どもに対してできることを一生懸命にやってこられたんだな・・・ということが、こちらにだんだんと伝わってくるものです。親自身の小さい頃のことや、自分の両親との関わりなどが親の口から内省的に語られ、愚痴もこぼせるようになると、これまでこういうふうに子育てしないではいられなかったんだろうな・・・と親の子育ての在り方にも納得ができるようになります。こちらが納得できるほど親自身のことが伝わってくるようになると、たいていの親は変化してきます。それは親が自分の不安や悩みに対して楽に向き合えるようになり、子育てをやり直してみようとする元気と自信を回復していくからです。
そうなると子どもも確実に変化してくるものです。
もちろん、担任一人で親の面談まで全て抱え込むということは、時間的にも心理的にも困難ですから、学校教育相談の体制を整えて、チームで「親のこころと会い続ける」ということが大切です。